2016/03/08

健康は日々の食事から

我々、青年海外協力隊員は、それぞれ皆異なるミッションを抱えて様々な国で活動をしている。私の場合はコンピュータ技術で、この国の電子カルテシステムの保守運営のサポートをすることだ。

一方で、隊員全員が全て抱えている、共通のミッションのようなものが存在する。
その一つが、「必ず生きて日本へ帰ってくること」だ。

そして五体満足が原則。それが出来なければ、晴れて「Mission Failure」となる。
なので、事前訓練においては健康管理やリスクマネジメントといった内容の講義を山のように受けさせられ、様々な知識を頭に詰め込まされる。0.1%でも生存確率を上げるためだ。元より危険な地域へは派遣されない青年海外協力隊なので、数あるボランティアの中でも特に安全とは言えるのだが、こういった入念な事前準備がさらに生存確率を上げていることはもはや語るまでもない。

さて、それだけ健康やリスクに関して入念な事前準備をしていても、やはり何が起こるかわからないのが人生というもので、これは途上国だろうが先進国だろうが変わることはない。交通事故に遭うときは途上国だろうが先進国だろうが遭う時は遭うし、病気にかかるときは途上国だろうが先進国だろうがかかる時はかかる。まあ何が言いたいかというと、要は風邪を引きました、ということだ。日本に居た時は就職してからというもの風邪なんてひいた記憶は、まああるにはあるが、休暇を取るほどの風邪は記憶がなかった私が、こっちに来てからふた月足らずで風邪でダウンとは、まあなんとも情けない話だ。

3/2(Wed)
その日の夕食は軽く、ツナサンドにカップスープで済ませたのを覚えている。食事の前から軽い胃のムカつきを抱えてはいたのだが、メシをしっかり食ったら治るだろうという脳筋特有の無茶理論を展開しながら、乗り切ろうとする。思えばその日は職場でもウィンドブレーカーを羽織ったりするなど、少々寒気を感じていたりもした。

ちなみに職場で私の机があるのはサーバールーム。エアコンが24時間365日フル稼働で、気温は常に25度に抑えられている部屋だ。日本国内の一般的なサーバールームと比べれば暖かい方だろうが、そんなにでかいサーバーが大量に置いてあるわけでもないし、何よりそこで人が作業することを想定しているとなれば、それ以上に寒くする必要性も必然性もない。だが、私にとってはその気温でも時折寒さを感じることがある。生来の寒がりなのである。

さて、そんな寒がりな私がその日、夕食を終えた後にいつも通り映画を見ていたときのことだ。徐々に、本当に徐々に胃のムカつきが大きくなっていく。その日は往年の名作「Back To The Future」を英語音声、英語字幕で見ていたのだが、途中から全く内容が頭に入ってこなくなる。別に吐くほどのムカつきではないのだが、胃の中に鉛でも入っているのではないかと思うような。これは何かに当たったか?と思いながら、ひとまず日本から持ってきた「新三協胃腸薬」の錠剤が入っているビンの封を開く。用量の3錠を水で流し込み、もはやDVDの内容など頭に入ってこなくなったので、PCの電源を落とし、ベッドに横になる。この時、夜の9時。

しっかり寝れば治るだろうという脳筋特有の無茶理論を展開しながら、ベッドの中で眠くなるのを待つ。しかし、待てども待てども眠気は来ず、代わりにやってくるのは胃の嘔吐感。徐々に質量を上げていく胃の中の鉛。苦しみに耐えながらベッドの中でもがく。2時間ほどベッドで横になっていただろうか、半分起きて半分寝ているような状態から、ようやく意識を手放すことに成功する。

そして日付が変わった午前2時ごろ、食べたツナサンドとカップスープを全て吐いた。

3/3(Thu)
夕食を全て吐いた私は口の中をゆすいだ後、再び布団に入る。食事を全て戻したことで胃のムカつきはなくなったのだが、吐く際に胃にかなり無理がかかったのか、今度は少し胃痛を抱えることになる。そして、吐くのと一緒に下からも水のような便が滝のようにあふれ出てくる。それにつけ加えて猛烈な寒気が私を襲う。体も猛烈に熱いのがわかる。そんな気力もなかったので測っていないのだが、体温は恐らく39度を超えていたはずだ。余りの寒気に、タオルケットに包まるようにして眠る。体の不調が眠りを妨げたため、その日は結局ほとんど寝ることが出来ずに朝を迎えることになった。

朝7時。いつも通りセットしていた目覚まし時計が鳴る。普段ならここで「もう20分・・・」と言いながらタイマーを再セットしてDive to bed againなのだが、今日はそうはいかない。重い体を起こし、部屋の扉を開けてルームメイトに体の不調を伝える。職場への連絡も忘れない。8時ごろ、ルームメイトが部屋を出た後で、自分の食事を始める。その日の食事はヨーグルトとパン、以上。かなり酷い下痢と胃腸の不調により、消化の悪いものは口には出来ない。この国で手に入るであろう消化の良いものといったら、今のところ思い浮かぶのはこのヨーグルトとパンしかなかったのだ。

ちなみにこのヨーグルト、かなり前から何世代にもわたって自家培養を繰り返してきたものなのだそうだ。他の隊員もこれを行っているらしく、牛乳さえあれば半永久的にヨーグルトを食べ続けられる。なんとありがたい話なのだろう。私もこれを後輩へ受け継いでいこう。まあ今は私がその恩恵を受けるときなのだが。

食事を終えるとお薬の時間だ。今回服用した薬は全て日本から持参したもので、ラインナップは以下の通りである。

改元・・・総合感冒薬 3錠
新三協胃腸薬・・・総合胃腸薬 3錠
ビオフェルミン・・・整腸剤 3錠
マルチビタミン&ミネラル・・・栄養剤 1錠

占めて10錠。まるで「強力わかもと」みてぇな分量だな!

ビタミン剤は1日1錠なので朝のみ、これ以外の計9錠を朝昼晩の3回服用する。薬はこれ以外にも解熱剤としてタイレノール(解熱鎮痛剤)を持ってきているのだが、これはまたの機会に取っておく。熱を測ると38度あったので解熱剤を飲んでも良かったのだろうが、風邪を引いたときの熱は必要なものだという話は有名なので、敢えて熱は高い状態をよしとする。

さて、やることをやり終えると静寂が訪れる。聞こえるのは波の音だけ。日中とはいえ、明かりを消していれば薄暗い部屋の中。胃のムカつきがほとんど収まっているので、体調は頭が熱でぼんやりとするのと若干だるい以外に問題はない。これならベッドに入ればすぐにでも眠れそうだ。ということでその日は本当に何もせず、寝ては起きてを繰り返し、起きている時間も椅子に座ってボーっとするだけの時間を過ごす。ここまで何もしなかった1日はかなり久しぶりではなかっただろうか。結果として1日で熱は下がり、体調も次の日には問題なく復活した。

ビオフェルミンの飲みすぎで便秘になった以外はなァ!

さて、結局1日で回復してしまったこの体調不良であるが、結局原因はなんだったのだろうか?こっちは風邪と決め付けているのだが、果たして本当にそうなのか。ルームメイトは同じ青年海外協力隊で看護師として来ている男性なのだが、その人が言うにも恐らく風邪であるということなので、まあそうなのだろう。要は胃腸を中心とした症状が多かったため、食べ物が原因の疾患も考えられるな、と思ったのだ。しかし、例えば病原性の大腸菌やコレラやノロだったら、間違いなくこの程度のダメージではすまなかったはずだ。この国にそういった菌が居るかどうかはわからないが、ありえない話ではないだけに今回は運が良かったと考えるべきだろう。

あとは風邪の予防だ。今回の体調不良を風邪と断定するのであれば、今後どうやって風邪を予防するかが課題となる。そもそも、なぜ風邪を引いてしまったか。恐らく考えられる原因は一つ、ビタミン不足だ。常日頃バランスの良い食事は心がけてはいるのだが、どうしたって野菜不足は避けられない。そうなると、もはや日常的にビタミンをサプリメントで補う他方法はないだろう。日本から持ってきたビタミン剤360日分が火を吹くぜ。

さて、健康第一の協力隊員ですが、皆様におかれましても健康に過ごされますようお祈り申し上げます。


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