2016/01/28

ナコナコ


とても青い、否、蒼い。
地面
白い、そして柔らかくも硬い。
上から照りつける日差しの強さは、蒼穹の深さが物語っている。
しかし、日差しは上から照りつけるのみならず、白い地面から反射した光が下からも我々を攻めたてる。
眩しい、目を開けていられない。
そして熱い。
暑いのではなくて、熱い。

日向は熱い、とても


帽子の縁で作る申し訳程度の日陰で上からの直射日光は防げるものの、地面が反射する光だけはどうしても防げない。
メガネを念のため調光レンズにしておいて良かった。

しばらくすると、にわかに空が翳り始める。
間もなくして、急に凄まじい勢いの雨が降る。
ここタラワの天気予報をiPhoneで見るとほとんど「Thunderstorm」になっているのだが、これはいつこのスコールが降るかわからないためだ。
現在は雨季とされているため割と雨も多いらしいのだが、ここ数年はその雨季、乾季という境も曖昧になってきているらしく、一年を通して割とよく雨が降るようだ。
少しは晴れろよ!いや、よく晴れてるんだけどさ!


実は今日、ホテルの水道が一時止まってしまった。
客室用に用意されていた水道用のタンクの一つが底を突いてしまったらしい。
タンクを切り替えてもらい、すぐに水道は復旧したのだが、このタンクの水の元になっているのは雨水だ。
ここタラワにおける生活用水は主に2つによって賄われている。
一つ目はご存知、雨水。
二つ目はなんと、井戸水だ。
当然、陸地が少なくすぐ近くに海が迫っているため地下水もそのほとんどが塩水なのだが、降った雨は地面にしみこんだ後にすぐに地下水の塩水と混ざることはなく、その上澄みとして真水の状態で残っている。
これが、ここタラワにおいて井戸水を生活用水として使用できる要因である。
ただ、いずれの水も直接は飲むことは出来ず、必ず煮沸を必要とする。
目に見えて不純物が多い場合は、ろ過も行う。
現在生活しているホテルにおいては割りと不純物は少ないので、私は水道水を煮沸した後の湯冷ましの水を飲料水として使用している。


さて、そんな生活が十数日ほど経過したわけだが、体調はすこぶる好調だ。
現在はまだ研修として、現地語の勉強をしている。
その授業をする際のメインの言語は、当然のように英語だ。
ちなみに、こちらで「イカ」というと魚になる。
「GO」は「NAKO」だ。
つまり、「I nako Betio(イ ナコ ベシオ)」で「私はベシオに行きます」になる。
そして面白いのは「WALK」が「NAKONAKO」であると言うことと、「TO」が「NAKO」であると言うこと。
つまり「私はベシオに歩いていきます」をキリバス語に訳すと

I nakonako nako Betio.

になる。
「イ ナコナコ ナコ ベシオ」ってなんかすげえ可愛いなおい!
明らかに、日本語の「歩く」や英語の「WALK」よりも、言葉として「歩いている」感がひしひしと感じられるような気がする。

ナコナコ

うん、なんかすげえ猫とか犬がナコナコしてる感じ。
これから、歩くときの擬音として「テクテク」とか「トコトコ」に加えて「ナコナコ」使ってみませんか?
使いませんか、そうですかー。残念だなー。

ちなみに挨拶は朝昼晩変わりなく「Mauri」だ。

道を歩くと、我々が日本人だからなのか、それともこの国の人達の人柄なのかわからないが、よくマウリマウリと道行く人々と挨拶を交わす。
ニッコリ笑いかければ9割がたニッコリ笑い返してくれる。
その際マウリと言えば、必ずマウリと返ってくる。
たまに向こうのほうから「Ko na aera?(コ ナ アエラ?)」などと聞いてくることもある。
これは「どこにいくの?」とか「なにしてるの?」といった、現地人同士で日常的にかわされる挨拶のようなものだ。
この問いに「Ikai(イカイ)」と答えれば「ちょっとそこまで」というやり取りが完成する。
とりあえずは誰とでも良い、この「Ko na aere?」から「Ikai」へのやり取りをこなしてみたい。
実は一度、そこらへんでたむろしている若者に言われたことはあるのだが、その際は瞬時に反応できず困った顔をしていたら「Where are you going?」と英語で言いなおしてくれた。
それでも「あー、えーっと、Here」としか言えなかった私はヘタレです。
さあキリバス人よ、誰でもいいからこの私に再びコナアエラって言え!言うんだ!

ちなみにベシオ地区というのは大きな港がある街で、物が沢山あるいわゆる経済の中心地なのだが、これに関してはまた後ほど書かせて頂こう。

さて、実は明日から研修の一環として三泊四日のホームステイが待っている。
正直英語すら怪しい今の私にキリバス語でホームステイ先のホスト達とまともなコミュニケーションが取れるとは思っていない。
まあ、事前に聞いている情報だと家族皆割りと英語が堪能だし、父親が省庁に勤めているということなので、かなり裕福なんだろうと思う。
その関係で週末にブログの更新が出来ないため、今回は早めの更新でした。
帰ってきたらホームステイの結果報告します。

それでは、また。

PS: 英語の勉強は毎日少しずつ続けています。

2016/01/24

南国の果物と共に生きる

ココナッツの木の幹にはところどころ切れ目が入れてある。
物によってはそれがないものもあるが、そういうものにもたいてい釘などが刺さっている。
なぜか?それは人が登りやすくするためだ。
若い男性がココナッツの木を登る。
速い、実に器用なものだ。
木の上には当然ココナッツの実がなっているのだが、それとは別に、なぜかペットボトルがくくり付けてある。
若者がそれを手に、ココナッツの木を降りてきた。
中には何かの液体が入っている。
「Try it」
飲め、と言うことだろうか?
え、これ飲めるのか?
促されるまま中の液体を少し手に取り、啜る。
甘い、ココナッツの樹液だろうか?
現地の人達はこれを煮て成分を濃くし、メープルシロップのようにして料理に使ったりすることもある。
実際、煮込んだ後の樹液を見せてもらったが、その色は蜂蜜さながらだ。
味は甘苦い感じ。工夫すれば良い調味料となるはずだ。

この国、キリバスにはとても子供が多い。
とても、多い。
その日はキリバスの伝統的な暮らしをしている集落へ訪問したのだが、ちょっとした集落にも子供が数十人といる。
ある日、私の父が日本へ来たベトナム人から言われたそうだ。
「日本には、子供は、どこに行けば、見れますか?」
彼らの感覚からすれば、これが正常なのだ。
日本には、あまりにも子供が少なすぎる。
子供すげえ沢山


総じてみんな可愛いです


そんな伝統的な集落において、色々ともてなしをしてもらう機会があった。
集落を案内してもらい、料理をふるまってもらう。
意外にも野菜と呼ばれるものもいくつか出てきた。
以下がその料理のラインナップである。

  • ココナッツの実の樹液漬け
  • カボチャ
  • ブレッドフルーツ
  • マグロの酢漬け
  • 米(ココナッツジュースで少し味付けがしてある)
  • 貝の塩漬け
  • 干した海草

カボチャは日本で食べるようなカボチャとは若干違って少し水っぽい。
ブレッドフルーツもカボチャと同じような食感と味で、我々にはなじみはないが瓜科の植物だ。
もっと魚が出てくるかと思ったのだが、今回の食卓ではマグロの切り身を酢のようなもので味付けしたもののみだった。
ただ、このマグロと米の相性が抜群なのである。
貝の塩漬けは、ちょっと塩味がきつかったかもしれない。
カボチャかブレッドフルーツで塩味を薄めながら頂く。
海草は、どうやら近海の底に沈んでいるものを採ってくるらしい。
キリバスの近海にはそこらに海草のようなものが沈んでいる。
いや、海草なんだろうけど、それを食おうとは思わんなー。
食べてみると、まるでスルメのような食感だ。
うん、これはいける。酒が欲しくなるなこれは。

さて、おもてなしに舌鼓を打った後は、集落においてココナッツがどれだけ重要な役割を担っているかの説明を受ける。

キリバス人は、ココナッツと共にある、といっても過言ではない。
それを説明するためにはココナッツがどれだけ余すところなく使用されるかを語らねばならないが、なんと家の材料にもしたりする。
まず、キリバスの伝統的な家には壁がない。
時には風が吹くこともあるだろうに、その時はどうしているんだろうかという疑問はさておき、その家に入ってみると、確かに涼しい。これは快適だ。
中と外で3度は気温が違うのではないかと言うくらい涼しい。
ちなみにその家は、全てがココナッツによって作成されている。
幹を骨組みに、屋根を葉っぱで覆えば完成だ。
骨組みを組むためには紐が必要になるのだが、それすらココナッツから作成する。
紐の元となるのは、ココナッツの実の外側を覆う繊維たちだ。

キリバス人は、ココナッツの実を食べるとき、その成熟具合によって食べ方を変える。
ちなみに、ココナッツも他の植物にありがちな色の変色を見せる。
青ければ未熟、黄色ければ成熟。
ココナッツジュースとして使用されるのは青いものだ。
また、ココナッツの実の内側には白い層が存在するのだが、成熟度合いによってその層の厚みが変わってくる。
成熟すればするほど、その白い層の厚みが厚くなる。
なお、この白い部分も彼らにとっては貴重な食料の一つだ。
ただし、成熟すればするほど中のジュースは味が悪くなってしまう。

そんなココナッツを食す際、彼らはまずココナッツの皮を全て剥く。
ここでいう「皮」とは繊維層のことを言うのだが、まずはココナッツの実がどういう層で形成されているかをまずは説明しよう。
ココナッツは、感覚的に以下のように構成されている、と思う。

  • 外皮
  • 繊維層
  • 内殻(繊維層を剥いた後に出てくる硬い殻)
  • 内実(食べられる部分)
  • ジュース

このうち、内殻から外側の繊維層を全て剥ぎ取るのだが、その際に使用する道具もかなりアグレッシブだ。
見ると、腰くらいまでの高さのとがった金属製の柱のようなものが地面から直立している。
太さは手首ぐらい。
これはなんだと思っていると、若者がココナッツをおもむろにその柱へ刺し込んだ。
その鉄柱の先端にココナッツを叩きつけ、器用に皮を剥ぎ取っていくのだ。
あの柱、すげえ危ないと思うんだけど、大丈夫なんだろうか。
子供走りまわってっけど。
内殻の一部、カッチカチやぞ


剥いた後の皮は、いったん地面に埋める。
乾燥させるためなのか、なんなのかわからないが、とにかく埋める。
しばらくしたら掘り起こし、器用に繊維を編みこんで紐を作るのだ。

それ以外にも、使えなければ火の燃料にしたりなど、ココナッツは余すところなく全て使用される。

葉っぱも屋根に使用するばかりではない。
ココナッツの木の葉は一本の枝に何枚も細長い葉がくっつくことで形成されているが、その葉を編みこむことで絨毯のようなものを作ることだってある。
実の繊維から作られた紐と貝を使って民芸品を作ったりもするようだ。
その民芸品を扱う民芸品屋さんへも連れて行ってもらえた。
その際になんと、一つただで持っていって良いというのだ。
心遣いに感謝し、一つ頂く。
ありがとう、これ一つ作るのにもかなり時間かかったろうに。

貝のペンダント、常備しています。


キリバス人にとって欠かせない、欠かすことの出来ないココナッツ。
おもてなしや民芸品のお返しとしてと言うのもなんだが、内殻の部分を使って新しい何かを作れないかと考えている。
この部分、実はかなりの硬度を持っており、彫刻に耐えうるのだ。
まあ、単純に器として使えるは使えるだろうが、それだけではなんとなく味気ない。

何か、良い案はないだろうか。



雨上がり、虹の色は日本と変わりません


2016/01/18

Dive To Blue

ヤシの木。
それらの隙間から見える、エメラルドグリーンの海。
見上げる蒼穹は、これまで見たどれよりも深い。
木々の間を見たことがない鳥が飛び交う。
鶏のクックドゥードゥルドゥーがひっきりなしに聞こえてくる。
唐突に叫び始める近所の子供たち。
時折聞こえるサイレン、これはパトカーなのか救急車なのか。

気温は30度に満たないか、それくらい。
湿度は天候による。
午前中はここが本当に赤道直下なのかと疑いたくなるほど涼しく、過ごしやすい。
晴れているときはとてつもなく強い日差しが照りつけるため、日のあたるホテルの玄関側はとてつもなく熱くなる。
ベランダは必ず日陰となるため、一日を通してとても心地が良い。
ヤシの木の下に建っている島の伝統的な家には、事前情報通り、壁がない。
屋根だけ、ヤシの木の葉を束ねて作ったと思われるもので覆っているが、日陰を作るだけで十分涼しいのでこれで全く問題はないのだ。

さて、ここまでの感想を一言で述べると、「まるでリゾート」だ。

他に日本以外の海のリゾート地へ行ったことがあまりないので比較は出来ないが、キリバスは相当良いリゾート地になりうる。
治安もかなり良いようだ。
ただ、最近は失業率の高さが問題となってきているらしい。

さて、キリバスという国をざっくりと説明したところで、現在の私の状況をまずは振り返ってみようと思う。

本日はキリバス到着から6日目。
一昨昨日はオリエンテーション一日目ということで、各関係省庁や職場訪問などを行った。
日中はほぼ車移動であったため、かなり大変だった。
一昨日は土曜日なので基本はオフなのだが、なんと現地に住んでいらっしゃる日本人の方々や先輩の隊員の方々、JICA関係でちょうどいらっしゃっている方が歓迎パーティを催してくれたので、ありがたく参加させてもらった。
驚くべきことに、出てきた料理は散らし寿司、ざるそば、フライドチキン、茶碗蒸しなど、ここでそろえようと思ったらかなり大変な代物だったはずだ。
散らし寿司には、なんとカニまで入っていた。
ここら辺でカニなんて採れるのか?と思っていたら、なんとこれも日本から持ち帰った冷凍ものを使用してくれたという。


感謝、圧倒的感謝・・・!


昨日は休日でそれぞれの余暇を過ごす。
実はこの文章も昨日のうちにしたためていたのだが、ネットの関係であげることが出来なかった。

今日からは、3週間ほどはオリエンテーションや現地語学研修が続くことになる。
それまでは同期隊員と一緒だ。

まだ、まだ始まらない。
しかし、モチベーションはかなり上がった。
休養も昨日十分にとった。


さあ飛び込もう、果てしなき蒼穹へ。
あ、ちなみにスキューバダイビングは禁止です。

2016/01/11

My Second HELLO WORLD

黒いコマンドプロンプトの画面に、たった一言「HELLO WORLD」という文字が表示される。

こんにちは、新たな世界。
この度、私はそちらへ足を踏み入れることとなりました。
世界よ、私へWELCOMEと言ってくれるだろうか。
私の来訪を歓迎してくれるだろうか。

7年前、テキストファイルに以下の文字列を打ち込んだのが全ての始まりだ。
public static void main(String[] args){
    System.out.println("HELLO WORLD");
}
全てのプログラマが、まずはこの「HELLO WORLD」を画面に表示させるところからスタートする。
どんなプログラミング言語をやるにしても、ほぼ例外はない。
プログラムという名の大宇宙を開く鍵、プログラミング。
だからこそ、その世界へ入るため皆、まずは「世界」へ挨拶をする。


明日、私は日本を離れ、文字通り世界と「こんにちは」をすることになる。
過去に旅行でタイや台湾、上海に行ったのとはわけが違う。

私の一回目の「HELLO WORLD」は、良くも悪くも大変だった。
1日のうち15時間をプログラミングに費やす日が半年続く期間すらあった。
その一回目の七年間が、私の二回目の「HELLO WORLD」を導いた。
二回目の「HELLO WORLD」は、果たしてどうなるのだろう。


こんにちは、新たな世界。
この度、私はそちらに足を踏み入れることとなりました。
世界よ、私へWELCOMEと言ってくれるだろうか。
私の来訪を歓迎してくれるだろうか。


願わくば、全ての協力隊員の「HELLO WORLD」に祝福があらんことを。