2016/01/24

南国の果物と共に生きる

ココナッツの木の幹にはところどころ切れ目が入れてある。
物によってはそれがないものもあるが、そういうものにもたいてい釘などが刺さっている。
なぜか?それは人が登りやすくするためだ。
若い男性がココナッツの木を登る。
速い、実に器用なものだ。
木の上には当然ココナッツの実がなっているのだが、それとは別に、なぜかペットボトルがくくり付けてある。
若者がそれを手に、ココナッツの木を降りてきた。
中には何かの液体が入っている。
「Try it」
飲め、と言うことだろうか?
え、これ飲めるのか?
促されるまま中の液体を少し手に取り、啜る。
甘い、ココナッツの樹液だろうか?
現地の人達はこれを煮て成分を濃くし、メープルシロップのようにして料理に使ったりすることもある。
実際、煮込んだ後の樹液を見せてもらったが、その色は蜂蜜さながらだ。
味は甘苦い感じ。工夫すれば良い調味料となるはずだ。

この国、キリバスにはとても子供が多い。
とても、多い。
その日はキリバスの伝統的な暮らしをしている集落へ訪問したのだが、ちょっとした集落にも子供が数十人といる。
ある日、私の父が日本へ来たベトナム人から言われたそうだ。
「日本には、子供は、どこに行けば、見れますか?」
彼らの感覚からすれば、これが正常なのだ。
日本には、あまりにも子供が少なすぎる。
子供すげえ沢山


総じてみんな可愛いです


そんな伝統的な集落において、色々ともてなしをしてもらう機会があった。
集落を案内してもらい、料理をふるまってもらう。
意外にも野菜と呼ばれるものもいくつか出てきた。
以下がその料理のラインナップである。

  • ココナッツの実の樹液漬け
  • カボチャ
  • ブレッドフルーツ
  • マグロの酢漬け
  • 米(ココナッツジュースで少し味付けがしてある)
  • 貝の塩漬け
  • 干した海草

カボチャは日本で食べるようなカボチャとは若干違って少し水っぽい。
ブレッドフルーツもカボチャと同じような食感と味で、我々にはなじみはないが瓜科の植物だ。
もっと魚が出てくるかと思ったのだが、今回の食卓ではマグロの切り身を酢のようなもので味付けしたもののみだった。
ただ、このマグロと米の相性が抜群なのである。
貝の塩漬けは、ちょっと塩味がきつかったかもしれない。
カボチャかブレッドフルーツで塩味を薄めながら頂く。
海草は、どうやら近海の底に沈んでいるものを採ってくるらしい。
キリバスの近海にはそこらに海草のようなものが沈んでいる。
いや、海草なんだろうけど、それを食おうとは思わんなー。
食べてみると、まるでスルメのような食感だ。
うん、これはいける。酒が欲しくなるなこれは。

さて、おもてなしに舌鼓を打った後は、集落においてココナッツがどれだけ重要な役割を担っているかの説明を受ける。

キリバス人は、ココナッツと共にある、といっても過言ではない。
それを説明するためにはココナッツがどれだけ余すところなく使用されるかを語らねばならないが、なんと家の材料にもしたりする。
まず、キリバスの伝統的な家には壁がない。
時には風が吹くこともあるだろうに、その時はどうしているんだろうかという疑問はさておき、その家に入ってみると、確かに涼しい。これは快適だ。
中と外で3度は気温が違うのではないかと言うくらい涼しい。
ちなみにその家は、全てがココナッツによって作成されている。
幹を骨組みに、屋根を葉っぱで覆えば完成だ。
骨組みを組むためには紐が必要になるのだが、それすらココナッツから作成する。
紐の元となるのは、ココナッツの実の外側を覆う繊維たちだ。

キリバス人は、ココナッツの実を食べるとき、その成熟具合によって食べ方を変える。
ちなみに、ココナッツも他の植物にありがちな色の変色を見せる。
青ければ未熟、黄色ければ成熟。
ココナッツジュースとして使用されるのは青いものだ。
また、ココナッツの実の内側には白い層が存在するのだが、成熟度合いによってその層の厚みが変わってくる。
成熟すればするほど、その白い層の厚みが厚くなる。
なお、この白い部分も彼らにとっては貴重な食料の一つだ。
ただし、成熟すればするほど中のジュースは味が悪くなってしまう。

そんなココナッツを食す際、彼らはまずココナッツの皮を全て剥く。
ここでいう「皮」とは繊維層のことを言うのだが、まずはココナッツの実がどういう層で形成されているかをまずは説明しよう。
ココナッツは、感覚的に以下のように構成されている、と思う。

  • 外皮
  • 繊維層
  • 内殻(繊維層を剥いた後に出てくる硬い殻)
  • 内実(食べられる部分)
  • ジュース

このうち、内殻から外側の繊維層を全て剥ぎ取るのだが、その際に使用する道具もかなりアグレッシブだ。
見ると、腰くらいまでの高さのとがった金属製の柱のようなものが地面から直立している。
太さは手首ぐらい。
これはなんだと思っていると、若者がココナッツをおもむろにその柱へ刺し込んだ。
その鉄柱の先端にココナッツを叩きつけ、器用に皮を剥ぎ取っていくのだ。
あの柱、すげえ危ないと思うんだけど、大丈夫なんだろうか。
子供走りまわってっけど。
内殻の一部、カッチカチやぞ


剥いた後の皮は、いったん地面に埋める。
乾燥させるためなのか、なんなのかわからないが、とにかく埋める。
しばらくしたら掘り起こし、器用に繊維を編みこんで紐を作るのだ。

それ以外にも、使えなければ火の燃料にしたりなど、ココナッツは余すところなく全て使用される。

葉っぱも屋根に使用するばかりではない。
ココナッツの木の葉は一本の枝に何枚も細長い葉がくっつくことで形成されているが、その葉を編みこむことで絨毯のようなものを作ることだってある。
実の繊維から作られた紐と貝を使って民芸品を作ったりもするようだ。
その民芸品を扱う民芸品屋さんへも連れて行ってもらえた。
その際になんと、一つただで持っていって良いというのだ。
心遣いに感謝し、一つ頂く。
ありがとう、これ一つ作るのにもかなり時間かかったろうに。

貝のペンダント、常備しています。


キリバス人にとって欠かせない、欠かすことの出来ないココナッツ。
おもてなしや民芸品のお返しとしてと言うのもなんだが、内殻の部分を使って新しい何かを作れないかと考えている。
この部分、実はかなりの硬度を持っており、彫刻に耐えうるのだ。
まあ、単純に器として使えるは使えるだろうが、それだけではなんとなく味気ない。

何か、良い案はないだろうか。



雨上がり、虹の色は日本と変わりません


1 件のコメント:

  1. 素晴らしい報告、続編を楽しみにしているけれど---「英語」にはしっかりと取り組んで時間も割いてくださいね。何とも懐かしい、子供たちは20年前とまったく変わってない。この辺りで、オバチャン達が、あの体格・体形でバレーボールやってたなー。

    返信削除