2015/12/31

言葉の裏に隠された意味とは

書きたいことが山のようにある。
なら全部書けばいいじゃんと思うだろうが、とてもじゃないがまとまりきりそうにない。
これまでのこと、これからのこと、自分自身のこと、キリバスのこと、頭に浮かんでは頭の中で言葉にしてみるのだが、いざそれを文章として起こした場合、何時間かかるかわからない。
が、いったん今回は今年中に書いておいたほうがよさそうな内容を書いておこうと思う。

まず、一つ誤らなければならない。
前回のエントリーで、「訓練の終了式で何を感動することがあるだろうか」などと書いたと思う。



すみません、普通に感動してました



5回くらい泣きそうになりました。
まあ、訓練生活では本当に色々とあったんです。

一番初めの泣きそうになったポイントは、終了式当日の朝。
最後のオリエンテーションがある講堂で、オリエンテーションが始まる前の礼をする際に放たれた一言。

「青年海外協力隊員、起立!」

その時、私はようやく青年海外協力隊になったのだ。
それまでは、我々に放たれる言葉は

「候補生の皆様、ご起立ください」

だった。
我々はその前日までは、彼ら訓練所スタッフにとっては「客」だった。
それが、その日を迎えてようやく、我々は彼らの「後輩」となったのである。
机に置かれた「Japan Overseas Cooperation Volunteer」の文字が描かれたピンバッジを手に取る。
たったこれだけのことが、大いなる感慨となって私の中に流れ込む。
隣の席に置かれたピンバッジにも、同じく「Senior Volunteer」の文字が

・・・ん?!

ごめんちょっと待って。

この中にシニアボランティアいねえはずだよな?!(シニアボランティアはひと月以上前に全員訓練終了)

結局手違いがあったようで、ピンバッジはいったん全部回収されていきました・・・。

こんなところにネタぶっこんでくるあたりさすがです先輩!!!!!!!


そんな訓練生活の最後の最後で、私とは別の生活班が面白い試みをしていたので、ここで取り上げたいと思う。
内容は、班員全員で俳句を読み、その俳句のどれが最もすばらしい作品であったかを競うと言うもので、「候補生に一人一票ずつ投じてもらうことで、優劣をつけるそうだ。
各自の作品は一枚の大きな紙にマーカーで書かれ、候補生全員が見ることが出来る位置に掲示されていた。
その全てが秀逸な作品で、私もどの作品に一票を投じるか小一時間は悩んだと思う。
その結果、とある作品が最も秀逸であると感じ、一票を投じたのである。
今回、その作品の作者の了解を得て、ここに掲載させて頂くことにした。
その作品は、以下のものである。


洗濯機 とても空いてる 土曜夜


私が一票を投じる上でまず考えたのは、これが「青年海外協力隊候補生が作成した、青年海外協力隊候補生としての俳句」であると言うことである。
ならば、その句を見たとき、万人がその句を理解できる必要はない。
逆に、万人が理解できてはならない。
青年海外協力隊候補生、ならびにOBがそれを見たとき、「あぁ~、確かにそうだよなー!」と言えるものであればそれでよいのだ。
それを踏まえた上で、この句を細かく見ていくとしよう。

まず、青年海外協力隊候補生は、例外なくその全てが必ず訓練合宿を経る。
その訓練合宿においては、風呂をはじめ洗面所、トイレなど、色々なものを共用することになるのだが、そのうちの一つに洗濯機がある。
洗濯機は合宿所の宿泊棟のそれぞれの階に複数台乾燥機とペアで設置されており、ある程度の台数もあったため、普段はそこまで渋滞する心配はない。
しかし、それでも平日は大体が全ての洗濯機がフル回転となっており、時には全ての洗濯機が使用中ということもしばしば起こり得た。
それが起こる原因の一つに、洗濯機の「利用時間制限」がある。
日曜日以外は、洗濯機はなんと12時半から17時までは使用禁止なのである。
何故かは知らん。
すなわち、日々の生活の中でも洗濯というものにかけられる時間には限りがある。
であれば、時間を有効活用するため、洗濯と乾燥を一気にやってしまえる夕方から夜にかけてやらなければならない、ということになる。
ちなみに夜は22時20分以降は洗濯機、乾燥機ともに常に使用不可となる。
みんな寝るしね。

要は、効率よく選択をするのであれば、午後の課業が終了した17時に洗濯機をまわし始め、食事や入浴を済ませて宿泊等に戻ってきたタイミングで終了した洗濯物を乾燥機にかけ、1時間弱放置と言うのがもっぱらのルーティーンなのだ。
全員がこのルーティーンを取っていれば、平日の夜は洗濯機が渋滞するのも頷けるというものだ。

そんな中、唯一夜に洗濯機が空く曜日がある。
それが、土曜日だ。

なぜ空くのかというのを説明するには、これまた別の要因を説明しなければならない。

先のエントリーで述べたこともあるかもしれないが、青年海外協力隊候補生の日常は、月曜から土曜日までは9時45分から17時までみっちりと課業で占められている。
平成27年度3次隊には幸か不幸か、ただの1日も連休が与えられることはなかった。
そして、月曜日から金曜日までは門限が19時までと決められている。
19時以降は施設の全てを施錠し、それ以降は入ることも出ることもできない。
しかし、土曜日と日曜日だけはその門限が22時まで引き伸ばされる。
候補生たちに唯一許された、わずかな自由がそこにはある。

合宿所の施設内は前面禁酒。
缶ビール一本でも持ち込んだことがばれれば即退所。
酒が飲めるタイミングなど、その土日のどちらかしかありえない。
であれば、翌日が休日となる土曜夜に飲みに行かない理由などありえない。
そんなこんなで、候補生のほぼ半数が土曜の夜は外出し、仲間とともに杯を酌み交わすことになる。
当然、外に出ていれば洗濯をすることも出来ない。
必然的に、土曜の夜は洗濯機がとても空くことになるのである。

まあ、これだけであれば「あー、普段忙しいから皆飲みに行ってんだねー」くらいの感想しか生み得ないだろう。
しかし、最も重要なポイントが、この句には隠されているのである。



それは、「なぜ土曜の夜に洗濯機が空いていることに気付けたか」と言うことだ。



土曜の夜にいつも飲みに行っているのであれば、土曜の夜に洗濯機を回す機会もないだろう。
であるならば、土曜の夜に洗濯機が空いているということにも気付けたはずはない。
すなわちこれに気付けたという人は、他の候補生が飲みに行っている間、なんかしらの理由で飲みに行くことが出来なかったと言う人なのである。

原因は色々とあるだろう。
語学の勉強がどうしても追いつかず、土曜の夜や日曜をフルに使わざるを得なかった人。
人間関係がうまくいかず、どうしても飲みに誘われたメンバーとそりが合わないと感じたため辞退した人。
そもそもお酒が飲めない人。
こんな原因は、青年海外協力隊員でなくても、誰でも起こりうることでもある。
しかし、協力隊候補生としての訓練合宿においては、ほぼ確実に全員がなんかしらの問題を抱える。
普段社会人生活を送っている中では、決して起こりえないような問題を抱える人すらいる。
その問題の中には、たまの休みに飲みに行くことすら阻むようなものもあったりする。
この句を読んだ彼がどのような問題を抱えていたか、それとも抱えていなかったかは私が知る術はない。
しかし、私自身がなんかしらの問題を抱えながら訓練生活を送っていたと言うことは、この句に隠された本当の意味に気付けたという点から見ても、間違いないのだろう。

さて、長々とたった17文字の文字列に秘められた意味を考察してきたわけだが、この句がいかに秀逸な句であったかがお分かり頂けたかと思う。
と言うことで、この句の私なりの解釈の要約を、以下に述べさせて頂こう。


普段は混んでいる洗濯機も、土曜の夜は皆が飲みに行っているために利用者が少ない。
自分は語学の勉強が追いつかないため、その飲みに参加することすらできず勉強し、ついでに洗濯機を回している。
回る洗濯機を見ながら思う。
本当に、こんなことで途上国へ行っても大丈夫なのだろうか?
不安に押しつぶされそうになる。
全てを忘れて、皆と飲みに行けたらどれだけ楽だったのだろう。
もう今、自分が辛いのかそうでないのかすらわからない。
この洗濯機のように、ただ、過ぎ行く日々を回すのみ。


なんかちょっと深読みしすぎですかねぇ?!


すみません、色々と物事を深読みしすぎる悪いくせが出てしまったようですテヘペロ。
なんとなくこのエントリーは、私という人間がどれほど疑り深いかが良くわかるエントリーとなりそうだ。
まあ、この点に関してはまた後ほど述べさせて頂くことにしよう。


さて、そんなこんなで迎えることとなってしまった大晦日。
今年は本当に激動の一年となりました。
春、今の職場に疑問を感じた。
受かるかどうかわからないまま辞めた仕事。
宙ぶらりんのまま過ごした夏。
協力隊候補生として色々なことを詰め込んだ秋。
無事、協力隊員になることが出来た冬。

来年、私は青年海外協力隊として南国の楽園へ行きます。
この一年、お世話になった全ての人と、携わった全てのものに感謝いたします。

ありがとう。

そして、来年もよろしくおねがいします。


2015/12/13

派遣前合宿その10 方法論

寒空の下、片道40分の道を歩いて店にたどり着き、席についてメニューを見る。
さて、今日は何を食い、何を飲もうか。
ひとまず今は腹が減っているのでガッツリと食べたい気分だ。
ふと、中華料理屋にもかかわらずメニューにある「ソースカツ丼」が目に付いた。
ご丁寧に「オススメ!」と書いてあるあたり、ソースカツ丼のメッカである駒ヶ根らしいと思う。

「あ、ソースカツ丼と、それからー・・・」

少し悩んでいると店員が口を開く。

「クロキリ、お湯割り?」

「あぁー、じゃあ、それでw」

店員さんが中国人なのは実に中華料理屋さんらしい。
完全に顔を覚えられているようで、いつも飲む芋焼酎「黒霧島」のお湯割をお勧めしてくる。
こちらとしても特にそれで不満があるわけではなかったのでそれをオーダーした。
一人で飲むのはこれで何回目だろうか。
訓練生活のラスト三週くらいからこれをはじめたのは、生活が急に楽になり始めたという理由もあるが、やはり私はお酒を飲むのが好きなようだ。

今週が、駒ヶ根での最終の休日となる。
はたして中華料理屋の店員さんは、私が協力隊候補生だということに気付いていただろうか?
もう、この中華料理屋でソースカツ丼を注文することも黒霧島のお湯割を注文することも無いだろう。
そう思うと、店員が暇になるのを見計らって「ありがとう、お世話になりました」くらいは言ってもよかったかもしれない。
ありがとう、ここで食べた春巻き、美味しかったです。


さて、話は変わっていよいよ今週が派遣前訓練の最終週である。
といっても、先週までの間に講座関連テストも語学テストも完了してしまったので、今週はほとんどもう何もやることが無い。
語学のクラスも先週に終わってしまった。
やることといえば、後片付けと壮行会と、あとは家に帰るだけだ。
忘れてはいけません。おうちに帰るまでが遠足です。
ほぼ全ての訓練メニューを消化したにもかかわらず、最後の休日で羽目をはずしすぎて派遣取り消しとなってしまう人が、なんとかなりの頻度でいるらしい。
にわかには信じがたいが、事実だそうだ。

あと、このエントリーは駒ヶ根の訓練所における最後のエントリーとなるわけだが、残念ながらしんみりとした雰囲気にはするつもりはない。
なぜなら、私たちはまだ何もしていないのだから。
まだ日本から出てすらいない私たちが、何を感動することがあるのだろうか。
これから任国で起こるであろう出来事の数々に比べれば、恐らくはこの訓練所で身に降りかかってきたその全てがまるで旱魃に苦しむ土地に降りそそぐ恵みの雨のように感じるだろう。
私の出発日は1月12日だが、そこまでに私がする必要があるのはただ一つ、「気持ちを切らさないこと」である。
家に帰ったら、数週間の冬休みが待っている、などということはありえない。
恐らくはこれまで以上の語学の自主訓練、および任国へ向けての準備が待っている。
重要なのは、セルフコントロールである。

実はそのための準備を今からしていたりする。
いかに語学を無理なく勉強するか。
もし単語を覚えるという作業がつまらないのであれば、つまらなくない方法を見つければいいだけの話だ。
もし長時間英語に触れているのがきついのであれば、きつくなくなるような方法を見つければいいだけの話だ。
要は、いつも思うことなのだが、方法論である。
精神論は、ありとあらゆる方法を試してそれでも駄目だったときに好きなだけ唱えればいい。
残念ながらメンタルが豆腐な私は、その精神論とやらがとてつもなく苦手だ。
いやお前元空手部だろうがよというツッコミに対しては全面的に謝るけれどもやな。
でも、空手部にいたときも言われました。

気合が無ければ何も出来ないが、気合だけでは何も出来ない。
根性が無ければ何も出来ないが、根性だけでは何も出来ない。

何でもかんでも、とりあえず頑張ればなんとかなる?
世の中そんなに甘くはない。

考えろ。

考えて考えて、とにかく楽な方法を見つけ出せ。

私は色々と探した結果、英語の勉強が出来るスマホアプリ(ゲーム含む)を色々と見つけました。
これがあれば、私の場合軽く1日10時間くらいは英語に浸ることが出来そうです。
加えて、訓練所で習ったことを復習しようと思います。
あ、こっちの方が先にやらないとね。

さて、今週からまた新しい生活がはじまる。

2015/12/06

派遣前合宿その9 粒度と順序

最近、訓練所にいて新たな悩みが発生している。
これまでのようにがむしゃらにやっていれば気がまぎれるようなものでもないので、余計にたちが悪い。
語学に関しては常にそのことだけを考え続けた。
人間関係に関しては、人の助けを借りたり、まあ自分で何とかしたりできた。
それで、なんとかここまで乗り切った。

しかし、「暇」だけはもうなんだか、どうしようもない。

徐々に終了していく訓練。
課業はこちらの意思とは関係なく上から下へ順番に流れていく。
それは、英語の課業に関しても同様だ。
過去のエントリーでも何回か触れたが、訓練中盤においては英語のテクニカルクラスへの準備が生活の大部分を占めていた。
しかし、先々週にそのテクニカルクラスの最後のプレゼンテーションも終わってしまった。

急に増える、自由時間。
いや、自由時間の物理量が増えたんじゃない。
自由時間を費やさなければならない課業が減っただけだ。
他の言語では「もう駄目だ・・・」と悲壮な声も上がっていると聞く。
授業が楽?違う、私自身が楽をしているだけだ。
まだ訓練だって終わったわけではないのにこれでは、家に帰ってからのことが今から不安だ。

考えなければならないことは沢山ある。
語学の勉強だって、もっとやらなければならない。
テクニカルクラスにて自身に課していたタスクも未完了のままだ。
今回は、そのタスクをここに記すとしよう。

まずおさらいだが、青年海外協力隊の訓練所における語学訓練は以下の二つに大きく分かれる。
  • ホームクラス
  • テクニカルクラス
ホームクラスとは、要はその言語の基礎力を高めるための授業だ。
その言語の文法の学習やボキャブラリーの強化など、その言語を使用するのに必要となる基礎をそのクラスで徹底的に鍛えなおす。
なお、他の言語の場合はイチからのスタートになる人も多いが、人によっては初期段階で大きく差がある場合もある。
したがって人数が多い言語の場合、ホームクラスは訓練所入所時の語学試験の試験結果においてざっくりとレベル分けされる。

これに対しテクニカルクラスとは、言語を使用する上での応用力の強化、すなわち「実践」である。
内容は基本的にはプレゼンテーション、人によっては模擬授業をやることになる。
こちらは職種に応じてクラス分けされる。
私の職種はコンピュータ技術なのだが、PC関連職種と言うことで「PCインストラクター」の方々と一緒にテクニカルクラスを実施することとなった。
私の内容は「DBとSQLに関する模擬授業」。
時間は40分の授業を5コマだ。
ゲゲゲ!40分の授業を5回もやんないといけないのかよ!
と、そのはじめは思っていたのだが、途中で気が付く。
DBとSQLなんて、たかだか200分そこそこの時間で教えきれるようなものではないということに。
そしてそこで思い出す。
そもそも、私はDBやSQLのことを教えてもらった経験がなかったということに。

そう、問題はまさに、語学の問題以前である「そこ」にあった。

私がITエンジニアを志したのは今から7年以上前の話だ。
私は転職の末、以前の会社に世話になることになった。
当然その時点でIT関連の技術は皆無、知識も経験もあるはずがない。
そんな私に最初に与えられたのは、研修課題だ。
≪研修課題≫
JAVA言語で指定された機能を作ってください。
わからないことがあれば先輩に聞くか自分で調べてください。
出来上がったら、レビュアーに声をかけてレビューしてもらってください。
以上。
それ自体は珍しいことでもないし、技術職であればOJT(On the Job Training)などよくある話だ。
研修が終了し、実際に現場で働くことになってからもそういったことだらけだった。
現場が変わるたびに変わる言語。
言語が違えば環境も違う。
そのたびに調べることは全て自分で調べ、自主学習と自己研鑽に努めた。
そして身に付く、「学習能力」。
ここでいう学習能力とは、完全に「プログラミング言語」限定の学習能力だ。
全く新しい言語を学習する場合に必要となる「学習内容」が、他の人よりは把握できている。
はじめに何が必要か、何をすれば動くのか、その結果何が出来るようになるのか。
ならば、それをただ教えればいいだけのことだと、思われるかもしれない。
しかし、事はそう単純ではない。
ここで私は少なくとも二つの問題に直面することになる。


それは「粒度」と「順序」だ。


一つ目の問題は「粒度」。
私が一番初めにプログラミング言語を学習した際、与えられたのは「課題」のみであった(実際はそうでなかったのかもしれないが記憶にないということは存在しなかったということだろう)。
誤解のないように言うが、私はそれが「悪い」と言っているのではなくて、ただ私の場合そうであったというだけの話だ。

ここで、私が「粒度」といっているものを再定義しようと思う。
ここで言う粒度とは、「目的地へ到達するために経由が必要な目標が現れる頻度」である。

「これが作れるようになれれば大体のプログラミングは習得していると言えますよ」という内容の課題を与えられ、ひとまずそれを自主的にこなす。
私は必死に課題をこなした。
なぜならば、その課題を完了することが出来なければ仕事を得ることが出来ないためだ。
結果として、私は2ヶ月間でJAVA言語をなんとか使えるレベルまで習得し、IT業界の現場へと旅立ったのである。
すなわち、私にとってはその「粒度」で問題はなかったのだ。

「何かを教える」という問題に対し、まず必要なのは「どれくらい教えるか」を考えることだと思う。
私の場合、教わったのは「どれくらい出来ればOKですよ」という「目的地」である。
人によっては、それさえ教えておけば後は自主的に自分で道を見つけて目的地へ到達してしまう。
つまり、その「粒度」は極めて粗いものだった。
しかし、これから私が任地にてIT技術を教えるとなったとき、果たしてそれと同じ粒度で良いだろうか?
答えは「NO」だ。

教え方の粒度が粗ければ粗いほど、その習得は教え子の「自主性」頼みとなる。
その自主性を支えるものは、教え子自身が持つモチベーションだ。
すなわち、教え子がその粒度に耐えうるモチベーションを持ちうるのであれば、ゴールだけ与えておけば良い。
しかしそうでないのであれば、細かく中継地点を設け教え子を誘導してやる必要がある。
でなければ、教え子は途中で道を見失い迷子になるか、諦めるかしてしまう。
しかし、手取り足取り教えることが正解でもないような気がしている。
なぜなら私が行く場所は国の省庁であり、教える相手は少なくとも政府機関のスタッフだ。
恐らく私は働きながら、教え子へIT技術を教えていくことになる。
ならば、イチから全てを教えている時間など存在しない。
それに相手は少なくとも大学を卒業している大人なのだ。
手取り足取りなど不要である可能性もかなり高い。

テクニカルクラスが終了して少し経つが、これに関して掘り下げて考えることは出来ないでいる。
ただ、とりあえずは現地へ行き、国民性や現場の空気、教え子自身のキャラクターをみて判断するのが一番なのではなかろうかとも思えてくる。
とはいえ、今のうちから「どれくらいの粒度とするか」のパターンはいくつか作っておく必要があるだろう。


二つ目の問題は「順序」。
教える内容の「粒度」がもし確定し、ある程度の内容を教えなければならないとなった場合、どうしても教える内容に「順番」が発生する。
全ての内容を一気に教えることは不可能だからだ。
まず、何を、教えるべきなのか?
まずはさておき、その言語の習得がなぜ必要なのかを教えるか?
それとも、何はなくとも動くソースコードを与えて動かさせてみるか?
最も簡単なソースコードを書かせてみるか?
言語の文法からいきなり教えるか?
なぜこれらの順序がわからないかというと、これも「教わった経験がない」からに他ならない。
「私がどうしてきたか」を語るのは簡単だ。
だが、前述した通り「それで良いか」どうかは別問題である。

私の場合、課題が与えられて、それが必要となる環境をまずは自分のPCへ設定する。
Oracleってなんだ?よくわからんけどとりあえずインストールすればええんやな。
JAVAってJDKってのインストールすればOKなん?
Eclipseってなに?!
Apacheってなにーーー?!
よくわからんけど全部入れればええんやな?!
とりあえず全部動くようになったけどほんまにこれでええんやな?!

え、あぁ、あー・・・、なんか画面に「Hello World」って表示されたけど、これでやっとソースコード動かせるようになったわけなんやなー。


つまり、課題の中心である「プログラミング」へ到達するまでに「よくわからないけど進まなければならない工程」を経ている。
この工程は一般的に「開発環境の構築」と呼ばれる。
正直に言うと、面倒くさいことこの上ない。
実際プログラミング初心者がプログラミングの勉強をするうえで壁の一つとなるのが、この「開発環境の構築」である。
私が任国で教えるとなるときも、これに関しては細心の注意を払う必要があると感じている。
つまり、ホントのホントにはじめから、つまり開発環境の構築からやらせるのか、もしくはクソ面倒で挫折しがちな開発環境の構築を教えるのはひとまず後回しにしてとりあえず出来上がってる環境を与えてソースコードを教えるところからはじめるのか。

最終的に全て教えることになるといっても、その順番を違えると所々内容の理解が浅くなってしまったり、興味を引き出しきれなかったりすることもあるだろう。
これに関しても、教える内容の「アウトライン」だけは事前に想定しておいたほうが良いのかもしれない。


上記をまとめると、私がこれからしなければならないタスクは
  • 教えることになりそうな内容の粒度をパターン化する
  • パターン化した内容の順序を考える
だ。

はい、これ完璧に今年の9月にあった技術補完研修で習いました。
ここまで書いてようやく思い出しました。両国の日暮さんありがとうございます。


私のキリバス出立の日は2016/1/12に決定している。
すなわち、今から換算しても残り1ヶ月ちょいくらいしかない。
その間に全てを用意するのは困難であるのは承知の上だ。
だが、できることはやらなければならない。
でなければ、任国の人々に失礼というものだ。

2015/11/29

派遣前合宿その8 Presser Cooker

酒を飲むと、いやなこともそうでないことも全てを忘れられる。
まあ、別に最近は訓練合宿が始まってすぐのようにストレスが溜まることはほとんどなくなったのだが。
今週、ようやく英語のテクニカルクラスも全日程が終了したところだ。
とはいえ、なんだか最近自室で一人ボーっとすることが多くなったのは事実である。

元々一人を好む気質であることも最近思い知った。
今日も一人、最寄の中華料理屋で一人焼酎のお湯割と食事を嗜んだ。
近頃は一人で食事をすることに安心感を抱き始めているのも確かなのだ。
とはいえ、別に友人と食事をすることはやぶさかではない。

英語講師のBrian先生曰く、「Training center is a presser cooker(圧縮鍋)」なのだそうだ。
これには、いくつかの意味が込められている。
一つは、多くの人を狭い寮へ詰め込んで、「常に誰かが近くにいる」という緊張感を味わわせると言う意味。
もう一つは、詰め込めるだけの課業を詰め込んで訓練生をストレスまみれにする、と言う意味。

いずれにせよ、ここで培われるのは英語力のみではないと言うことである。

訓練も残すところあと2週間と少し。
最近になって、朝がとてもつらくなった。
これは、最近になって急に寒さが厳しくなったことと決して無縁ではない。
先週はようやく訓練所にも小雪が舞い込んだ。
今週末にはまた少しだけ雪が舞いそうでもある(iPhone天気予報)。
寒いのは苦手だ。
この点においては、本当に早くキリバスへと行きたくてしょうがない。

ところで、今週は語学のクラスの一環で色々なゲストをお呼びして会話を楽しもうという企画があった。
まあ、企画と言うよりは語学クラスの課業の一部なのだが・・・。
お呼びしたのはJICAの関係で海外からお呼びしている外国人の方々である。
国籍は様々で、それこそアフリカ、東南アジア、大洋州までその国籍は多岐にわたる。
ただ、私のクラスにお呼びした2人は少なくとも英語圏のお方だ。
当然スペイン語訓練のクラスにはスペイン語、フランス語訓練のクラスにはフランス語のお方がそれぞれ呼ばれている。
私のクラスには、フィジーとブータンの方がいらっしゃった。

しかし、ここで私はかなりの衝撃を受けることになる。

お二人が喋る言葉の、半分も聞き取れない・・・。

私はこの訓練所に来て、多少なりとも努力はした。
ひょっとしたら努力が足りなかったのかもしれないが、それでもほんの少しくらいはマシになっていると思いたかった。
しかし、それは私の思い過ごしだったのかもしれない。
同じクラスの訓練生に聞くと
「フィジーの人はそんなに聞き取りにくくはなかったよ」
だと言う。
英語はとにかくまず喋れてナンボだと思い、スピーキングの練習ばかりしてきたツケがここに来てめぐってきたのだろうか。

コミュニケーションの基本は、まず相手の話を聞きしっかりと相手の話の意図するところを理解するところから始まる。
であるならば、対話における基本は「リスニング」であることはいまさら確認するまでもない。
そんな単純なことに1ヶ月半もかけてようやく気づくバカチンが私です。

訓練生活は残り2週間余りとなっている。
まだ、圧縮鍋でコトコト煮こまれる日々は続きそうだ。

2015/11/22

派遣前合宿その7 言語の壁と3倍の歳の差

今日は少し軽めのエントリーとさせてもらおうと考えている。
なぜなら今日は、訓練所に来て初めて「日曜日に飲酒」したからである。

大いに飲み、大いに食べ、大いに遊び、とてつもなく有意義な時間を過ごすことが出来た。
なぜなら今日は、アメリカ人のご自宅に誘われた初の経験でもあったからである。

誘ってくれたのは、私の英語の講師であるBrian先生だ。
あまり他人の個人情報をデカデカと公表するのはよろしくないので詳細は伏せるが、生粋のアメリカ人で日本人の奥さんを持つジョーク好きのナイスガイだ。

客が来たときだけ使用するというテーブル。家もデカいが他もデカい

家がデカければ出てくるメシもデカい。これは七面鳥。

締めはなんと自家製アップルパイ!!!

これでもかと言うくらいに食事をさせてもらい、Brianやそのご家族の方とも交流をさせて頂いた。
特に私(33歳)はBrianの息子さん(11歳)と即効で仲良くなってしまい、彼の部屋へ案内してもらったり、挙句の果てには「妖怪ウォッチ」のゲームプレイの様子を観察させられることに。
あ、彼との会話は全部日本語でした。
あとボクシングに興味があったようだったので、ひとまず右ストレートの打ち方だけ教えてあげました。
やはりこういう時「子供と即効で仲良くなれる」と言うスキルを持っていると便利なものである。
なお、私は今33歳である。

うるせえよ!子供好きなんだからしょうがねえだろ!七面鳥食わせんぞ!!!

あ、七面鳥はめちゃウマでしたよ♪

家の中の会話は全て英語になるものと覚悟していたのだが、呼び鈴を鳴らしたあと出てきた奥さんが放った「いらっしゃいませ~」で全てが瓦解した。
息子さんと娘さんも一切英語を話さない。
英語を話すのはBrianと我々訓練生のみ。
なお、奥さん、息子さん、娘さんも英語は完璧に喋れはするようで、Brianとのコミュニケーションは全く難儀していないようだった。

とはいえ、Brianが英語で喋り、ご家族全員が日本語で喋るというやり取りを見ていると、なんだかとてつもない何かを見ているような気分になったのは確かだ。

Brianも日本語喋れるって言ってたよな・・・。

なんにせよ、週6で我々の相手をしつつ休みを返上してまでここまで豪勢なパーティを開いてくれたBrianには感謝してもしきれない。

ありがとうBrian、俺頑張るよ。

2015/11/15

派遣前合宿その6 ソースカツ丼とSQLと引越しと野外訓練

朝7時、毎週日曜日はこの時間にiPhoneのアラームが鳴るようにセットしてある。
起き上がろうとすると、腰に鋭い痛みが走る。
昨日までの訓練による弊害が響いていると言うことだ。
一体昨日まで何をしていたんだという疑問は後述するとして、ひとまずは激動の今週を頭から振り返ってみようと思う。

まず今週の月曜日、訓練における中間試験が実施された。
初っ端からクライマックス感が尋常ではない。
中間試験と言っても、実施されるのは語学の試験のみである。
それも、とりあえずは「ふるいにかけて落とす」という趣向のものではないため、受験するにしてもそこまで気の重いものではない。
あるとすれば、試験結果によって精神的に格付けがされるくらいのものである。
と言っても、あまりにも結果が酷いようであれば個別に呼び出されるということだ。
呼び出しはその日のうちにされると言うことだったが、結局私は後ろから肩を叩かれることなくその日を終えることが出来た。

試験内容はリスニング、リーディング、ライティング、スピーキングと、英語はTOEFLと似通ったような内容となっている。
他の言語でもおおよそこのような内容らしいが、当然難易度にはレベルに応じて高低があるようだ。

私が受けたのは英語の中くらいの難易度の試験で、平均を多少下回ってはいたがなんとか赤点は免れたようだ。

うるせえよ!英語苦手なんだよ!!!ソースカツ丼食わせんぞ!!!

あ、そういえば、ここ駒ヶ根はソースカツ丼が名物なのでお越しの際はどうぞ♪
堂々と飯テロをかましていくスタイル


中間試験が終わると、次の日(火曜日)はプレゼンテーションだ。
以前のエントリーで少し述べたことがあるが、訓練所における語学のうち、英語にはかなり早い段階から「テクニカルクラス」なるものが用意されている。
もうそろそろ英語以外の語学でも似たような内容の語学訓練が追加されるようだが、私の場合はPCインストラクションに関する「模擬授業」をそこでやらされることになる。

私が選択した授業の内容は「データベースとSQL」だ。
IT業界にいる人以外の方にはこの時点で何のことかさっぱりわからないと思う。
正直、極めればこれだけでメシが食える内容であるだけに、諸々とヘヴィーな感じを余儀なくされている。
今回が3回目の授業。その前2回が散々な内容であっただけに、色々と考えさせられ、色々と相談も聞いてもらって挑んだ授業は、ひとまずは及第点といえる内容だったと思う。
また次の週には4回目のプレゼンが控えてはいるが、兎にも角にも納得のいく内容の授業が一回できたということでかなり自信がついた。
が、今日は今日で4回目の授業を準備する中で色々と思うところがあったのだが、それはまた後述するとしよう。


プレゼンが終わると、次の日(水曜日)は語学のクラスに数回認められていると言う「Half Day Trip」だ。
Half Day Tripとは一体何かと言うと、午前のクラスを丸々使い、外出して先生と歩きながらボキャブラリーを養おう!というものだ。

書を捨てよ、町へ出よう!

行き先は駒ヶ根市内にあるお寺、「光善寺」だ。
かなり古くに立てられたと思しきそのお寺は、かなりの歴史を感じさせる。
いくつか写真を撮っておいたので載せておくとしよう。


道中の紅葉。見事に赤々としていますが訓練所内にあるものはこれ以上に赤いです。


木々の間を抜けていきます。後姿は講師のBrian先生です。

お寺。威風堂々。歴史を感じるポイントpart1


樹齢うん百年の杉。でかぁぁい!説明不要!歴史を感じるポイントpart2


中に仏様が入っていると言う小ぶりの三重の塔。歴史を感じるポイントpart3

歩きながらもBrianが色々と指差しながら「What is it?」と問題を出してきます。
大きな岩、側道の溝、それにはまっている金属製の格子、針葉樹林、つる状の植物。
全部併せて40以上の単語は出てきたであろうか。
帰った後に出てきた単語を復習したのだが、Brian曰くその半分でも覚えていれば上等ということだ。
とはいえ、せっかくなので覚えさせていただこう。ありがとうBrian、俺頑張るよ!


水曜日の課業が一通り終わると、部屋の引越しが始まる。
一体どういうことかというと、ここまで我々は「寮の部屋が少ない」という理由から、二人部屋を余儀なくされていた。
しかし、訓練生活が後半に差し掛かると、シニアボランティアが先に訓練を終了することになるので、部屋に余裕ができるのだ。
ちなみに、その日がシニアボランティアの終了日である。
これまで同じ釜の飯を食い、色々と生活をともにしてきた年配の方々。
シニアの方が乗るバスが訓練所を出発する前、時間を惜しむようにシニアと握手を交わし、言葉を交わすJOCVの面々。
所内にいる全員が見送りに出ているのではないかと思うくらいの大勢に見送られ、バスは訓練所を出発する。

さて、送り出した後はこちらのやるべきことをやらねばな、と寮に戻ると、共有の掲示板に私の班のシニアの面々からメッセージが。
「ありがとうございました、皆様元気でね!また会いましょう!」
「君達ならやれる!又逢いましょう」
「この班で満足でした」
「ありがとうございました!」
「i Muchísimas gracias!」←(スペイン語で「私はあなたたちに感謝します!」)

もう、ホントやめてくれるかな、こういうの。
泣きそうになるだろうが畜生!

送り出すだけでこれである。
自分自身の終了式では、泣かない自信がない。たぶん泣く。きっと泣く。

そんなしみじみとした空気の中、部屋の移動を粛々と済ませた。


木曜日は特に何もなかったので骨休めだ(授業は普通にあったがなァ!)。


そして来たる金曜日と土曜日、この訓練の「目玉」と銘打っていたらしいプログラムが実施される。

その名も「野外訓練」。

名前だけ聞くと、なんだかアウトドアでもすんのかなー?という印象だと思うが、その内容はかなりすさまじい。
まず、使用できる物品がかなり限定される。
自室から持ち出せる物は着替え、500mlペットボトルの水一本、雨合羽、懐中電灯、筆記用具、軍手くらいだろうか。
あとは支給された寝袋や救急セットなどだ。
正直、トイレットペーパーまで制限するのはやりすぎじゃね、と思う。

ライター禁止、ナイフ禁止、調理に使用する火は裏山から拾ってきた薪を使用して起こす。
食器は全て竹を割って作成する。
炭と灰、排水の処理に関しては、廃棄の時間と場所が限定されている。
当然、携帯電話などは持ち出し禁止。
カメラといった電子機器も持ち出しが許されていなかったので、残念ながら写真は残すことが出来なかった。
野外訓練期間中は寮の自室へ戻ることは、緊急時以外は一切許されない。
なんだかここまで書いただけで既に若干気が滅入るが、訓練が開始するとさらに驚愕の内容が待っている。
ただ、これ以上詳しい内容を記載すると訓練所スタッフの人から何か言われそうなので自粛するとしよう。
とにかくコンセプトは、「諸々と制限された状況下で知恵と工夫を駆使して生活する力を身につける」と言うことだ。
まあ、持てる知識は結構使ったよね。

そしてこの訓練、とても楽しかった上に普段はあまり話すことがなかった方々ともお話しすることが出来たりと、非常に有意義で楽しいものであったことだけは書いておこう。
なぜか訓練中、持病の腰痛がとてつもなく悪化したことを除けば。
訓練中は床に座ったり、低い位置の椅子に腰掛けたりという姿勢をとることが多かったため発症したものと思われる。
恐らく急性のものなので、明日には回復しているだろう。

野外訓練終了は昨日の午後4時半。
その後はすぐに洗濯を開始し、山のように夕メシを食い、風呂に入り、泥のように眠る。
これほど楽しく、エキサイティングで、二度とやりたくないと思ったアウトドアは初めてだ。

さて、相も変わらず迎えた日曜日は本当の意味での休息日となった。
やることは山ほどある、が、ゆっくり自室でひとりごちれるというだけで、精神的にはかなり助かる。
英語のテクニカルクラスの4回目に関してめぐらせた考察に関しては、ちょっと長文になってしまった今回は見送ることにしよう。


明日から、また激動の1週間が始まる。始まってしまう。
頑張ろう。


あ、今回の題名はキーワードを羅列しただけです。

お前ソースカツ丼食いてえだけだろと言うツッコミには全面的に謝るけれどもやな。


2015/11/08

派遣前合宿その5 悲しみの大地

いよいよ明日、語学の中間試験が実施される。
シニア海外ボランティアの方々の試験は先週に先だって行われたので、明日実施されるのは青年海外協力隊のみが対象である。
また、シニア海外ボランティアの方々にとっての試験は、「中間」試験ではなく「最終」試験だ。
すなわち、この試験の合格をもってシニア海外ボランティアの方々は合宿終了となる。

元々、シニア海外ボランティアの方々の合宿日程は青年海外協力隊に比べて半分しかない。
そもそもシニア海外ボランティアってなんだよと言う方のために説明しておくと、大きく分けてJICAのボランティア事業は以下の3つに分かれる。

  • 青年海外協力隊
  • 日系社会青年ボランティア
  • 短期ボランティア

そして、それぞれ年齢別に20~39歳を「青年」、40~69歳を「シニア」として分類している。
私の場合は「青年」の「海外協力隊」だ。
なおシニアに応募する場合、より人生経験を積んでいることを踏まえたうえでの選考となるので、より高い技術と言語レベルが要求されるようだ。
と言うことは、合宿開始時点でそれ相応の言語能力を有することが期待されていることもあり、合宿期間が短く設定されている、と私は認識している(実際はどうか知りません)。
すなわち、来週にはシニアの人が訓練所からいなくなってしまうのでその前に飲みに行こうという話になり、翌週に試験が控えているというのに土曜の夜は久しぶりの飲み会へ足を運ぶことになった。

合宿期間中は、全候補生はある程度ランダムに複数班へ分割される。
なので、それぞれの班の中のシニアと青年がどれほどの比率になるかは班によって異なる。
どうやら私の班はシニアの方の割合が若干多かったようで、来週の中ごろ以降は班員が3分の2ほどに減ってしまう。
約1ヶ月間、毎日顔を併せてきた方々なので、名残惜しいが無事訓練を終了されたと言うことで喜ばしいことでもある。
なんと、私の班のみここまでただの一人も病欠がでていない。
シニアの方々の頑張りがその功績の大きなウェイトを占めていることは想像に難くはないだろう。

シニアの方々の、今後のご健勝をお祈り申し上げます。


それはそうと、先週は私の任国であるキリバスの詳しい諸事情を聞く機会があった。
お話そしてくれたのは、つい去年までキリバスのボランティア調整員をされていたと言う方で、これからも色々と海外へ飛び回るという忙しい合間を縫って、我々のためにこの長野県駒ヶ根市まではるばる足を運んでくださった方だ。
服はどうすれば良いか、本当に買い物は高いのか、野菜は本当に食えないのか、海はどうなのか、本当に沈みかけてるのか。
色々と話を聞いたのだが、要約するとこうだ。

  • 服は割りとカジュアルでも良いが、仕事に行く際はスラックスに半袖カッターシャツくらいの格好はしておいた方が舐められない。
  • とても親日。
  • 履物はサンダルでも良いが、蚊に足を刺されたくなければ靴を履くこと。
  • 電化製品は高い。正味2,3倍は覚悟すること。
  • 野菜は自給自足しているものが存在する。輸入しなければならないものはやはり高いが、それでも全く口に出来ないほどではない。
  • 海は汚い。首都のタラワ島の人口密度がありえないくらいに高いうえ、海をトイレ代わりに使用していると言うこともあり、大腸菌がやばいらしい。もしタラワ島で泳ぎたければ場所を選ぶこと。
  • スキューバダイビングは全面禁止(JICAからのお達し)。なぜかというと、もし減圧症にでもなった場合、治療が出来ない上に飛行機にも乗せられず、最終的に最悪の事態しか招かないため。
  • 住まいは基本的に勤め先が用意してくれる。当然壁あり。冷蔵庫も、たぶんある。冷房があるかどうかは運次第。
  • 水は貯水タンクに雨水を溜めて使用する。飲む場合は当然、ろ過&煮沸が必須だが、慣れてくるとそれをしない人もいるらしい。ただし、お勧めはしない。

そして、色々と聞く中で最も気になったのは、やはり「本当に沈みそうなのか」ということだ。
首都タラワ島の平均標高は約2m。
満潮に高潮が重なれば、道はほぼ水没するようだ。
しかし、実際に水没するかどうかに関しては、実ははっきりとしたことはいえないらしい。
確かに少しずつ土地は少なくなってきてはいるようだが、その原因は実は「海面上昇」のみが原因ではないようなのだ。

もう一つの原因が、島の土壌が「珊瑚礁」で形成されたものであるということだ。

珊瑚礁と言うのは、海洋生物である珊瑚の死骸が堆積して出来た地形で、その多くがカルシウムで構成されている。
なぜカルシウムで構成されているかと言うと、珊瑚が「動物」であるためだ。
「動物」であるため、骨を持つ。
珊瑚が死ぬと、骨以外が真っ先に分解される。
残った骨に、新たな珊瑚が発生する。
その繰り返しで出来たのが珊瑚礁だ。
そして、「カルシウム」であるため雨の酸で溶けてしまう。
特に、雨がしみこんでいった先の地下での侵食が起こりうると言う話だ。

そして、珊瑚礁であるがゆえに実は「土地が広がっている」という主張もあるようなのだ。
上述したように、珊瑚は動物なのでどんどん繁殖する。
珊瑚が繁殖すれば珊瑚礁は広がっていく。
すなわち、土地が広がっていく。

論理がかなり短絡的な気がしなくもないが、あながち的外れとも言い難い。
ただ言えるのは、そこまで悲観的にならずとも良さそう、ということだ。
少なくとも現地の人たちはあまり気にしていないような感じのことも言っていたように思う。

良かった、悲しみの大地なんてなかったんだ。

キリバスは、決して滅び行く国なんかではない。

これからの人々のあり方次第で、いくらでも存続していける。

そもそも、我々が元気と希望を持たずにその土地へ行ってどうするというのだ。

少なくとも、元気と希望だけは絶やさぬよう、頑張らねば。


頑張らねば・・・。

2015/10/31

派遣前合宿その4 便利な便利な通販生活

訓練所での生活が本日で4週目を終えた。
語学の勉強も徐々にペースをつかみ始め、先生とも少しずつではあるが打ち解けてきていると感じている。
酒が飲めないと言う環境にもほぼ適応し、逆に完全にお酒への耐性が無くなってしまったように思う。

はじめはお酒を飲めないと言うことで夜なかなか寝付けないと言うのが目下の問題であった。
しかし私はこれを、インスタントコーヒーを代用することで克服した。
要は、お腹に入れば何でも良かったのだ。
たとえそれにアルコールが入っていなかったとしても。
しかし、今度は別の問題が発生することになる。
いかにしてインスタントコーヒーを手に入れるか、だ。

私が今暮らしている青年海外協力隊、駒ヶ根訓練所は最寄の駅からも車で約10分ほどかかる、少し坂を登ったあたりにある僻地だ。
最寄のドラッグストアでさえ、自転車で片道20分ほどかかるらしい。
自転車使ってどこかに行ったことがないからわからんけど。
ただ、すぐ近くを高速道路が走っており、そのサービスエリアが徒歩数分圏内にあったりする。
そのサービスエリアには自由に出入りが出来るようになっていて、実はファミリーマートがその中にあり、訓練生はよく利用している。
残念なのは、そこにインスタントコーヒーとクリープが売っていないと言うことだ。

よくよく考えれば当然かもしれない。

高速道路走る人がこんなの使わねえよ。

しょうがないので、インスタントコーヒーだけでも毎週金曜に訓練所へ来てくれる出張販売にて購入する。
ただし、クリープが売っていない。
売ってはいるのだが、小分けパックされた若干お高い感じのものだ。

自慢ではないが、私はコーヒーには造詣が深いと思っている。
豆は焙煎からやっていたし、淹れ方もマスターしていると思う。
だからと言うわけではないが、インスタントコーヒーは出来ればクリープなどを入れて味を若干ごまかして飲みたいのだ。

クリープは入れたい。でも出張販売に売っているものはコストパフォーマンスが悪い。
そこで私は名案を思いつく。

そうだ、こんなときのためにAm@z○nがあるんじゃないか!
早速品物が無いか検索をかけてみると、あったあった。
220g×3パックの詰め替え用か、悪くない!ビンならある!
送料も無料とくれば、いちいちこちらから町へ繰り出して買う労力も省けると言うものだ、やはり俺は天才だな!
迷わずポチッと購入する。

なお、訓練所においては届け物は守衛を通じて受け取ることが可能だ。
届け先の名前に訓練所の名前と私の名前にしておくだけで、届いたときに所内アナウンスで届いた旨を伝えてくれるシステムだ。
とても便利なので、ここに来てからというもの頻繁に利用してしまっている。

購入ボタンを押したのは10/29、届くのは二日後だ。

さて、それまでの間、クリープはどうしようか・・・。

仕方なく、訓練所の友人Aへ夕食前に話をふってみる。


私「なあAさ、クリープ持ってない?」

A「ん?いや俺コーヒー飲まないからなー」

私「そうかー、いやさ、クリープをさっきAm@z○nで買ったのはいいんだけど、届くのが明後日でさ、それまでインスタントコーヒーをブラックで飲むのつらくてさー」

A「え、コンビニあんじゃん」

私「あー、サービスエリアのファミマっしょ?あそこクリープ売ってないんさ」

A「いやいや、そうじゃなくて」

私「ん?」

A「牛乳、コンビニで買えよ」

私「 (・д・ ) 」

A「 (・。・) 」





(・д・ )







(・д・)











私「・・・あー、いや、ほら、牛乳、保存できないじゃん?腐らすとまずいしさ」

A「・・・同じ階の徒歩10秒以内にある談話室に冷蔵庫があるだろ」

私「 (・д・ ) 」

A「 (・。・) 」





(・д・ )







(・д・)











私「・・・あー、いや、ほら、牛乳、余らすとさ、もったいないじゃん?使いきれるかわからんし」

A「・・・少な目のやつあるだろ、500mlとか200mlとか・・・」

私「 (・д・ ) 」

A「 (・。・) 」












私「・・・あー、いや、ほら、その、あれだ」

A「 (・。・) 」

私「おー確かにそうだ!コンビニで牛乳買えば良いよな!俺の負けでいいからその顔をやめろァ!」




弁の立つ友人を持って僕ァ幸せだな畜生!!!!!!!!





なお、その日のうちに牛乳買いに行きました。




今朝クリープが届きましたが現在20時、使い切るかと思って買った500mlの牛乳はまだ半分も使っておりません。
賞味期限は11/11までだから問題なく使い切るでしょうけどね。


問題は、クリープ要らねえじゃんってことなんだよなー!!!

2015/10/25

派遣前合宿その3 ああ忙秋の日々よ

今日10/25は我が青年海外協力隊、駒ヶ根訓練所のある駒ヶ根市において開催されていた、国際協力イベント「みなこいフェスタ」の最終日だ。
候補生の中からも希望をすれば運営に参加できると言う、とても有意義なイベントだ。
実際私も3週間ほど前、募集の掲示が張り出された瞬間に協力者として応募欄に記名した。

ところが、2週間前の火曜日、あの尋常ではない日がやってくる。
その日が開けてすぐ、私は応募欄にある私の名前をマーカーで塗りつぶした。

前回のエントリーで少し触れたが、火曜日はとてつもなく忙しくなる。
なぜなら、その日にいくつかの「合宿運営」に関する会議が開かれるためだ。
開かれる会議は大きく分けて二つ、
・各種委員会会議
・班会議
である。

日課である課業が5時過ぎに終了すると、そのまますぐに委員会会議へ移行する。
私の場合は班長なので、「班長・副班長会議」に参加することになる。
この会議は夕食の直前まで続き、食事が終わって一息つく間もなく、すぐさま次の「班会議」が始まる。
この班会議では、先ほどの「各種委員会会議」で出た連絡事項などを班員へ伝え、その後は何か班の中で話し合いたいことなどを募る場となる。
何もなければ19時半くらいでこれは終わるのだが、実はその日はこれで終わりではない。
その後に「班ゼミ」なるものが控えている。
これが、実に約50分を超える時間を要する。
結局その日は、完全に開放されたのは21時半を回ってからだった。

私はその初回班ゼミの運営をやることになっていた(運営自体は持ち回りで行う)。
当然、準備にもかなりの時間を取られることになる。
語学の勉強もやらなければならない。
他にも何かやらなければならないことがあったと思うが、もう忘れた。
班ゼミ自体は私の順番はもう来ないのだが、他にもなにかやらなければならないタスクが増えるのではないかと日々戦々恐々としている。


そんなこんなで迎えた今週、語学の新たな訓練が始まる。

その名も「テクニカルクラス」。

普段やっている午前のクラスが文法などを中心としたお勉強であるのに対し、こちらは実際の任地での活動を想定した、いわば「模擬戦闘」。
私を含めたPC関連の隊員は「PCに関する現地人へのインストラクション」が主な活動内容なので、それの模擬授業を実際にやろう、と言うものだ。

うん、私はインストラクションがメインではないけどね、うん。

ただ、実際に任地へ赴いて私がやらなければいけないのは「システムの保守運営」だ。
保守運営など、上司への仕様の説明が出来なければ勤まるはずがない。
であれば、このインストラクションはその訓練にはうってつけとも言える。
ただ、その数が半端ではない。
これから訓練が完了するまでの2ヶ月間に、40分を5回。
日本語でですらアレだけてこずった授業を、しかも英語でやらなければならない。

実は、今日はただひたすらその仕込みをしていた。
外の景色が見える談話室で、一人黙々とテクニカルクラスの準備を進める。
見える木々は徐々に秋色を帯び始め、生き物達の鳴声は亡骸へと姿を変えていく。


ああ、なんと清秋の素晴らしき日々よ。

わたしは茶をすすり、ぽつりとひとことひとりごつ。


今日、みなこいフェスタ行かなくて良かった~・・・。

2015/10/18

派遣前合宿その2 ある日の土曜日

朝の5:50、iPhoneに仕掛けておいたアラームが鳴る。
青年海外協力隊候補生の朝は早い。

2,3分ほど布団の中でもぞもぞした後、2段ベッドの上の段から降りると窓のカーテンを開ける。
窓から光が差し込むと、ベッドの下の段で寝ていた同居人がようやく動き出す。
いつもならこのルーチンなのだが、今日は逆に彼に起こされてしまった。
候補生としての訓練生活も2週目が終わろうとしている土曜日、さすがに疲れが溜まってたのかもしれない。

起床すると歯磨き、洗顔をするのだが、トイレ洗面所は共同だ。
顔を併せる他の協力隊の面々と軽く挨拶を交わしながら洗面所へと向かう。
私が寝泊りしているのは5階なのだが、なんと実は全員が男性というわけではない。
おおよそ半分くらいを区切りとして私が寝泊りしている箇所の反対側が女性用の居住空間となっている。
しかし明確に「ここからは男性禁止」となっているわけではないので、たまにそちら側を通ってしまうと妙にドギマギしてしまうのはここだけのナイショだ。

洗顔と歯磨きを済ませ、部屋に戻って着替えていると館内放送が鳴り始める。
時間はきっかり6:10だ。
放送によると、今日の集合は玄関前らしい。
雨が降っていた場合は館内の体育館へ集合することになる。
運動の出来る服装へ着替え、ランニングシューズを履いて外へ出る。
そう、起きてすぐにあるのは朝礼と早朝ランニングだ。

館内放送を聞いてから用意を始めるのでは間に合わない可能性があるので、目覚ましは5:50にかけるようにしている。
今日は危うく二度寝しそうになってしまったので、月曜日からはダブルアラームだな。
特に私は遅れるわけにはならないのには、私が班長であるからという理由がある。
朝礼は6:30から始まるのだが、その時間には「点呼が完了」している状態となっていなければならない。
ということは、少なくともその何分か前までには点呼を始めていなければならない。
点呼を行う側である私が遅れれば、何より班員へ示しがつかない。

点呼は、集まった順に私へ名前を告げていくという方式をとっている。
徐々に集まって行く面々の名前の名簿に丸をつけていく。
時間が6:25ほどになると大体埋まるのだが、大体いつも2,3人くらいはこの時点で丸が付いていない。
6:28になるとさすがにあせり始める。

早く来い!早く来い!別に俺が責任を取るわけじゃないけどいいから早く来い!
班の取り決めとして、6:25には集まるようにと周知はしておいたのだが、それでも一番最後に来るのはやっぱりあいつだ。
集合時間ギリギリで丸をつけながら、今度少し言っておいたほうが良いななどとと考える。
丸が全て付いた名簿を日直へ渡し、本日の朝の点呼は完了だ。

朝礼は基本的に連絡事項と国旗掲揚、ラジオ体操だ。
掲揚される国旗は、日によって変わる。
平成27年度3次隊として行く隊員がいる国を順番に回していくそうだ。
私が行くキリバス国はまだ掲揚されていない。

ラジオ体操は小学生の頃以来やった記憶はないのだが、特に第二はこの歳になって初めてやったと思う。
今週の火曜にはなんとラジオ体操の「中の人」がはるばるこの駒ヶ根訓練所までやってきてくれて、ラジオ体操の一つ一つの動きに関してレクチャーをしてくれた。
ラジオ体操から流れる「声」であり、NHKのテレビにもよく出演しているという方である。
何気なくやっていた動きの一つ一つにはちゃんと意味があったのだと改めて思い知る。
その時教わった動きを頭でなぞりながら、ラジオ体操を実施する。

ラジオ体操が終わると、程なくしてランニングだ。
コースは3コース用意されていて、一番長いのは一周3.2kmとなっている。
走るときにいつも思うのだが、ここで全力を出して心肺能力を高めるのが良いのか、ほどほどに走るのが良いのか。
全力を出してしまうと、確実にその日の体調に影響が出てしまうので困りものだ。
しかし、ほどほどに走っていたのでは、大した練習効果も得られないような気もする。
今週の水曜日にあった体力測定ではなんとかシャトルランは最後まで走りきったのだが、同じく走りきった他の隊員に比べて私の疲労の度合いが明らかに高かった。
心肺能力向上は必須である。

朝のランニングが終わると朝食だ。
訓練所での食事は、月曜の朝から土曜日の昼までは必ず三食摂らなければならない。
さらに言われるのは、「食事を無駄にするな」ということ。
途上国では食事をしたくても出来ない子供たちが沢山いる。
ご丁寧に、全世界飢餓MAPまで壁に貼り付けてある。
そんなの見たら残すに残せない。
しょうがないので、食べられないものがある場合はシェアすると言う方法をとることになる。
なので、まじまじと見ていると随所でおかずのやり取りをしていたりする。
私は幸か不幸か好き嫌いがないのでいつも受け取る側だ。
なので、白米はいつも少なめにしている。

毎回「ごはん少なっ!www」と言われます


大体いつも朝食はこんな感じだ。

基本的に朝食は二つから選べるようになっているのだが、たまに間違えて二つとも取ってしまう人がいるらしく、「朝食のおかずが足りないことがある」などと班長会議で議題に上がっていた。

朝食が終わってからしばらくは自由時間だ。
午前の課業開始が8:45からなので、ランニングで失った体力を少しでも補うため仮眠を取る。
人によってはこの時間で午前の課業の予習をしたりするらしいが、私の場合予習は大体前日の夜に済ませるので、ここでは極力何もしないし考えない。

午前の課業は三時限に分けて行われる。
分けて行われると言っても、午前は一貫して全期間全て言語訓練だ。
任地ごと、それぞれの言語レベルごとに部屋と講師が分かれる。

私の場合はどうだったかと言うと、具体的に言語レベルがどうだったかは教えてはもらえなかったので、残念ながら知る術はない。
が、教室内にいる面々を見ると、それぞれ得意分野は違えどなんとなく同じくらいの言語レベルと言う気はする。
実際の授業はというと、アメリカの初等教育で行われるような国語の授業だ。
他のクラスでは既にプレゼンテーションや講習訓練なども行っていたりするところもあるらしい。
がんばらなければ。

午前の課業が終わると、そのままの流れでクラスメイト、講師と一緒に昼食を摂る。
その際も会話は全て英語だ。
はじめのうちはどう話せば良いのかがわからなかったためほぼ無言で昼食を摂っていたのだが、これだけ一緒にいれば勝手もわかってくるものだ。
本日の昼食は急に皆ワイワイと話すようになった。
とても良い傾向だと思う。
ちなみに、昼食の際に講師と一緒に摂るかどうかは講師によって異なるようだ。

午後の課業は四時限に分けて行われるが、行われる授業は必ずしも語学訓練と言うわけではなく、現段階では色々な授業を学ばせてもらっている。
例えば、今日の6,7時限目はなんと「座禅」に関する講習だ。
近隣のお寺から住職をお呼びして諸々のお話をして頂き、実際に座禅も行った。
ラジオ体操に関する講習も受けたと上述したが、その際ににも講師はその道のプロをお呼びしている。
よくよく考えればとてつもなく贅沢な話だ。

ただし、これも訓練生活が後半にもなるとスケジュールに並ぶ文字はほとんどが「語学訓練」になる。
訓練における語学の比重がいかに高いかが良くわかる。
と言うことは、やはり実際に任地に行った際に最も困るのは語学に関してと言うことだ。

まあ、そうなるな。

午後の課業が終わるとお待ちかねの夕食の時間だ。
それまでの短時間の間にお風呂に入ってしまう人もいるようだが、私は食後にゆっくりとつかりたい派の人間なので、その間は英語の予習復習をする。

土曜の夕食と日曜の三食に関しては希望者のみが喫食が可能だ。
しかし、逆に希望した場合は必ず摂らなければ後でお叱りを受けることになってしまう。
なので土曜の夜に飲みに行くか否かは割りと事前に予定しておかなければならない。
なお、土曜夕食と日曜三食の希望締め切りは木曜日までとなっている。
それ以降は追加希望も取り消しも出来ない。

午後の課業が終わって自室で英語の勉強をしていると、自室のドアがコンコンと叩かれる。
鍵を開けて扉を開くと、 班員の見知った女性が一人。
なんでも、これから急に飲みに行くことになったので、夕食を貰ってほしいと言う事だ。
特に断る理由も、まああるにはあるが、無碍に断るのもなんなのでひとまず快諾しておく
おかずのやりとりが見られるのは上述した通りだが、こういったやりとりもやはり認められている。
要は、残さなければ良いのだ。残さなければ。
ただ問題なのは私が2人分食べなければならないということと、今日は豚汁の量がハンパなかったということだ。
肉だったら大喜びしてたんだけども。

しかも、私今ダイエット中なんだよなー・・・。

さて、夕食が終わると残りの時間は自由に使うことができる。火曜日以外は。
火曜日に関してはまた今度お話しすることにしよう。

火曜日以外は、基本的に夕食後にお風呂に行く。
お風呂は共同の大浴場だ。
これほど大きな湯船に毎日つかることができるというのは訓練生活における癒しの一つと言える。
人間、お風呂につかるという行為は予想よりもはるかに肉体へ良いリラックス効果をもたらすと言う。
他の隊員候補生も当然一緒に入ることになるので、裸の付き合いと言うものが生まれることになる。
同じ釜の飯を食い、裸の付き合いをする。
他では得がたい連帯感が生まれるのも無理はない。

風呂を浴び終えて自室に戻るとようやく一息つける時間が訪れ
\コンコンッ/
ない。
ドアを叩く音に再び鍵を開け扉を開くと、また別の班員がそこに。
PCの使い方がわからないから教えて欲しいと言う事だ。

これまで私はIT業界にいたということもあり、PCに関してそこまで頼られるようなことがなかったのでとても新鮮な気持ちである。
訓練所において、PC関連の職種の隊員はとても重宝されるようだ。
過去の隊員の中には訓練所内にあるLANの整備を全てやってしまったと言うツワモノもいたらしい。
今のところ良く聞かれる内容は、「共有フォルダへの接続方法」と「プリンターの初期設定」だ。
共有フォルダに関してはデスクトップ上にショートカットを作ってやり、プリンターはドライバーのインストールだけちゃちゃっとやって終わりである。
今後は徐々に質問の内容も変わってくるだろう。

自室に戻り英語の予習復習をしていると、22:20くらいにチャイムが鳴る。
夜の点呼の予鈴だ。
その10分後の22:30から夜の点呼が始まり、にわかに廊下が騒がしくなる。
中には既に寝ている人もおり、その場合は別の人に「もう寝ます」と伝えておけば点呼には出る必要はない。
私の班は男性10人女性9人で、男性と女性で居住階が分かれているため、女性側の点呼は副班長の女性にお任せしている。
私の側は10名の男性がいることを確認し、それをその日の人員のとりまとめをする日直に報告すればその日のお仕事は全て完了だ。

おっと、忘れてはいけない大切なお仕事が最後に残っていた。
それは、「よく寝ること」だ。

これからまだまだ長い期間続く訓練生活において、ストレスを少しでも溜めるような生活習慣は極力ないほうが良い。
そのストレスを少しでも減らしてくれるのが「質の良い睡眠」である。
普段から寝酒をしていた私にとって、寝る前にお酒を飲めないというのは「眠れない」と言うこととほぼ同義だ。
しかし1週間この生活をすると、だんだんとお酒を飲まない寝床と言うものにも慣れてくるものだ。
今日も、良い夢が見られそうである。






ひとまず、昨日の1日を細かく書いてみた。
大体おんなじ毎日だけど、まあまあそれなりOKである。
だけど、なんとなく虚しくは別になりはしないのでご安心されたし。

JOCV候補生の、訓練所での生活がどのようなものかが少しでも伝わればと思う。
つらいことも疲れることもあるが、まあ楽しくやっている。

他にも書きたいことは山のようにある。
しかしほぼ毎日がこんな感じなので、日曜のあいた時間くらいしか余裕がないのが現状である。
過去の訓練生の中には毎日ブログを書き続けた猛者もいたらしいが、にわかには信じがたい。

残念ながら、次のエントリーも1週間ほど開きそうだ。

それでは、良い週末を。