2015/11/08

派遣前合宿その5 悲しみの大地

いよいよ明日、語学の中間試験が実施される。
シニア海外ボランティアの方々の試験は先週に先だって行われたので、明日実施されるのは青年海外協力隊のみが対象である。
また、シニア海外ボランティアの方々にとっての試験は、「中間」試験ではなく「最終」試験だ。
すなわち、この試験の合格をもってシニア海外ボランティアの方々は合宿終了となる。

元々、シニア海外ボランティアの方々の合宿日程は青年海外協力隊に比べて半分しかない。
そもそもシニア海外ボランティアってなんだよと言う方のために説明しておくと、大きく分けてJICAのボランティア事業は以下の3つに分かれる。

  • 青年海外協力隊
  • 日系社会青年ボランティア
  • 短期ボランティア

そして、それぞれ年齢別に20~39歳を「青年」、40~69歳を「シニア」として分類している。
私の場合は「青年」の「海外協力隊」だ。
なおシニアに応募する場合、より人生経験を積んでいることを踏まえたうえでの選考となるので、より高い技術と言語レベルが要求されるようだ。
と言うことは、合宿開始時点でそれ相応の言語能力を有することが期待されていることもあり、合宿期間が短く設定されている、と私は認識している(実際はどうか知りません)。
すなわち、来週にはシニアの人が訓練所からいなくなってしまうのでその前に飲みに行こうという話になり、翌週に試験が控えているというのに土曜の夜は久しぶりの飲み会へ足を運ぶことになった。

合宿期間中は、全候補生はある程度ランダムに複数班へ分割される。
なので、それぞれの班の中のシニアと青年がどれほどの比率になるかは班によって異なる。
どうやら私の班はシニアの方の割合が若干多かったようで、来週の中ごろ以降は班員が3分の2ほどに減ってしまう。
約1ヶ月間、毎日顔を併せてきた方々なので、名残惜しいが無事訓練を終了されたと言うことで喜ばしいことでもある。
なんと、私の班のみここまでただの一人も病欠がでていない。
シニアの方々の頑張りがその功績の大きなウェイトを占めていることは想像に難くはないだろう。

シニアの方々の、今後のご健勝をお祈り申し上げます。


それはそうと、先週は私の任国であるキリバスの詳しい諸事情を聞く機会があった。
お話そしてくれたのは、つい去年までキリバスのボランティア調整員をされていたと言う方で、これからも色々と海外へ飛び回るという忙しい合間を縫って、我々のためにこの長野県駒ヶ根市まではるばる足を運んでくださった方だ。
服はどうすれば良いか、本当に買い物は高いのか、野菜は本当に食えないのか、海はどうなのか、本当に沈みかけてるのか。
色々と話を聞いたのだが、要約するとこうだ。

  • 服は割りとカジュアルでも良いが、仕事に行く際はスラックスに半袖カッターシャツくらいの格好はしておいた方が舐められない。
  • とても親日。
  • 履物はサンダルでも良いが、蚊に足を刺されたくなければ靴を履くこと。
  • 電化製品は高い。正味2,3倍は覚悟すること。
  • 野菜は自給自足しているものが存在する。輸入しなければならないものはやはり高いが、それでも全く口に出来ないほどではない。
  • 海は汚い。首都のタラワ島の人口密度がありえないくらいに高いうえ、海をトイレ代わりに使用していると言うこともあり、大腸菌がやばいらしい。もしタラワ島で泳ぎたければ場所を選ぶこと。
  • スキューバダイビングは全面禁止(JICAからのお達し)。なぜかというと、もし減圧症にでもなった場合、治療が出来ない上に飛行機にも乗せられず、最終的に最悪の事態しか招かないため。
  • 住まいは基本的に勤め先が用意してくれる。当然壁あり。冷蔵庫も、たぶんある。冷房があるかどうかは運次第。
  • 水は貯水タンクに雨水を溜めて使用する。飲む場合は当然、ろ過&煮沸が必須だが、慣れてくるとそれをしない人もいるらしい。ただし、お勧めはしない。

そして、色々と聞く中で最も気になったのは、やはり「本当に沈みそうなのか」ということだ。
首都タラワ島の平均標高は約2m。
満潮に高潮が重なれば、道はほぼ水没するようだ。
しかし、実際に水没するかどうかに関しては、実ははっきりとしたことはいえないらしい。
確かに少しずつ土地は少なくなってきてはいるようだが、その原因は実は「海面上昇」のみが原因ではないようなのだ。

もう一つの原因が、島の土壌が「珊瑚礁」で形成されたものであるということだ。

珊瑚礁と言うのは、海洋生物である珊瑚の死骸が堆積して出来た地形で、その多くがカルシウムで構成されている。
なぜカルシウムで構成されているかと言うと、珊瑚が「動物」であるためだ。
「動物」であるため、骨を持つ。
珊瑚が死ぬと、骨以外が真っ先に分解される。
残った骨に、新たな珊瑚が発生する。
その繰り返しで出来たのが珊瑚礁だ。
そして、「カルシウム」であるため雨の酸で溶けてしまう。
特に、雨がしみこんでいった先の地下での侵食が起こりうると言う話だ。

そして、珊瑚礁であるがゆえに実は「土地が広がっている」という主張もあるようなのだ。
上述したように、珊瑚は動物なのでどんどん繁殖する。
珊瑚が繁殖すれば珊瑚礁は広がっていく。
すなわち、土地が広がっていく。

論理がかなり短絡的な気がしなくもないが、あながち的外れとも言い難い。
ただ言えるのは、そこまで悲観的にならずとも良さそう、ということだ。
少なくとも現地の人たちはあまり気にしていないような感じのことも言っていたように思う。

良かった、悲しみの大地なんてなかったんだ。

キリバスは、決して滅び行く国なんかではない。

これからの人々のあり方次第で、いくらでも存続していける。

そもそも、我々が元気と希望を持たずにその土地へ行ってどうするというのだ。

少なくとも、元気と希望だけは絶やさぬよう、頑張らねば。


頑張らねば・・・。

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