2015/10/18

派遣前合宿その2 ある日の土曜日

朝の5:50、iPhoneに仕掛けておいたアラームが鳴る。
青年海外協力隊候補生の朝は早い。

2,3分ほど布団の中でもぞもぞした後、2段ベッドの上の段から降りると窓のカーテンを開ける。
窓から光が差し込むと、ベッドの下の段で寝ていた同居人がようやく動き出す。
いつもならこのルーチンなのだが、今日は逆に彼に起こされてしまった。
候補生としての訓練生活も2週目が終わろうとしている土曜日、さすがに疲れが溜まってたのかもしれない。

起床すると歯磨き、洗顔をするのだが、トイレ洗面所は共同だ。
顔を併せる他の協力隊の面々と軽く挨拶を交わしながら洗面所へと向かう。
私が寝泊りしているのは5階なのだが、なんと実は全員が男性というわけではない。
おおよそ半分くらいを区切りとして私が寝泊りしている箇所の反対側が女性用の居住空間となっている。
しかし明確に「ここからは男性禁止」となっているわけではないので、たまにそちら側を通ってしまうと妙にドギマギしてしまうのはここだけのナイショだ。

洗顔と歯磨きを済ませ、部屋に戻って着替えていると館内放送が鳴り始める。
時間はきっかり6:10だ。
放送によると、今日の集合は玄関前らしい。
雨が降っていた場合は館内の体育館へ集合することになる。
運動の出来る服装へ着替え、ランニングシューズを履いて外へ出る。
そう、起きてすぐにあるのは朝礼と早朝ランニングだ。

館内放送を聞いてから用意を始めるのでは間に合わない可能性があるので、目覚ましは5:50にかけるようにしている。
今日は危うく二度寝しそうになってしまったので、月曜日からはダブルアラームだな。
特に私は遅れるわけにはならないのには、私が班長であるからという理由がある。
朝礼は6:30から始まるのだが、その時間には「点呼が完了」している状態となっていなければならない。
ということは、少なくともその何分か前までには点呼を始めていなければならない。
点呼を行う側である私が遅れれば、何より班員へ示しがつかない。

点呼は、集まった順に私へ名前を告げていくという方式をとっている。
徐々に集まって行く面々の名前の名簿に丸をつけていく。
時間が6:25ほどになると大体埋まるのだが、大体いつも2,3人くらいはこの時点で丸が付いていない。
6:28になるとさすがにあせり始める。

早く来い!早く来い!別に俺が責任を取るわけじゃないけどいいから早く来い!
班の取り決めとして、6:25には集まるようにと周知はしておいたのだが、それでも一番最後に来るのはやっぱりあいつだ。
集合時間ギリギリで丸をつけながら、今度少し言っておいたほうが良いななどとと考える。
丸が全て付いた名簿を日直へ渡し、本日の朝の点呼は完了だ。

朝礼は基本的に連絡事項と国旗掲揚、ラジオ体操だ。
掲揚される国旗は、日によって変わる。
平成27年度3次隊として行く隊員がいる国を順番に回していくそうだ。
私が行くキリバス国はまだ掲揚されていない。

ラジオ体操は小学生の頃以来やった記憶はないのだが、特に第二はこの歳になって初めてやったと思う。
今週の火曜にはなんとラジオ体操の「中の人」がはるばるこの駒ヶ根訓練所までやってきてくれて、ラジオ体操の一つ一つの動きに関してレクチャーをしてくれた。
ラジオ体操から流れる「声」であり、NHKのテレビにもよく出演しているという方である。
何気なくやっていた動きの一つ一つにはちゃんと意味があったのだと改めて思い知る。
その時教わった動きを頭でなぞりながら、ラジオ体操を実施する。

ラジオ体操が終わると、程なくしてランニングだ。
コースは3コース用意されていて、一番長いのは一周3.2kmとなっている。
走るときにいつも思うのだが、ここで全力を出して心肺能力を高めるのが良いのか、ほどほどに走るのが良いのか。
全力を出してしまうと、確実にその日の体調に影響が出てしまうので困りものだ。
しかし、ほどほどに走っていたのでは、大した練習効果も得られないような気もする。
今週の水曜日にあった体力測定ではなんとかシャトルランは最後まで走りきったのだが、同じく走りきった他の隊員に比べて私の疲労の度合いが明らかに高かった。
心肺能力向上は必須である。

朝のランニングが終わると朝食だ。
訓練所での食事は、月曜の朝から土曜日の昼までは必ず三食摂らなければならない。
さらに言われるのは、「食事を無駄にするな」ということ。
途上国では食事をしたくても出来ない子供たちが沢山いる。
ご丁寧に、全世界飢餓MAPまで壁に貼り付けてある。
そんなの見たら残すに残せない。
しょうがないので、食べられないものがある場合はシェアすると言う方法をとることになる。
なので、まじまじと見ていると随所でおかずのやり取りをしていたりする。
私は幸か不幸か好き嫌いがないのでいつも受け取る側だ。
なので、白米はいつも少なめにしている。

毎回「ごはん少なっ!www」と言われます


大体いつも朝食はこんな感じだ。

基本的に朝食は二つから選べるようになっているのだが、たまに間違えて二つとも取ってしまう人がいるらしく、「朝食のおかずが足りないことがある」などと班長会議で議題に上がっていた。

朝食が終わってからしばらくは自由時間だ。
午前の課業開始が8:45からなので、ランニングで失った体力を少しでも補うため仮眠を取る。
人によってはこの時間で午前の課業の予習をしたりするらしいが、私の場合予習は大体前日の夜に済ませるので、ここでは極力何もしないし考えない。

午前の課業は三時限に分けて行われる。
分けて行われると言っても、午前は一貫して全期間全て言語訓練だ。
任地ごと、それぞれの言語レベルごとに部屋と講師が分かれる。

私の場合はどうだったかと言うと、具体的に言語レベルがどうだったかは教えてはもらえなかったので、残念ながら知る術はない。
が、教室内にいる面々を見ると、それぞれ得意分野は違えどなんとなく同じくらいの言語レベルと言う気はする。
実際の授業はというと、アメリカの初等教育で行われるような国語の授業だ。
他のクラスでは既にプレゼンテーションや講習訓練なども行っていたりするところもあるらしい。
がんばらなければ。

午前の課業が終わると、そのままの流れでクラスメイト、講師と一緒に昼食を摂る。
その際も会話は全て英語だ。
はじめのうちはどう話せば良いのかがわからなかったためほぼ無言で昼食を摂っていたのだが、これだけ一緒にいれば勝手もわかってくるものだ。
本日の昼食は急に皆ワイワイと話すようになった。
とても良い傾向だと思う。
ちなみに、昼食の際に講師と一緒に摂るかどうかは講師によって異なるようだ。

午後の課業は四時限に分けて行われるが、行われる授業は必ずしも語学訓練と言うわけではなく、現段階では色々な授業を学ばせてもらっている。
例えば、今日の6,7時限目はなんと「座禅」に関する講習だ。
近隣のお寺から住職をお呼びして諸々のお話をして頂き、実際に座禅も行った。
ラジオ体操に関する講習も受けたと上述したが、その際ににも講師はその道のプロをお呼びしている。
よくよく考えればとてつもなく贅沢な話だ。

ただし、これも訓練生活が後半にもなるとスケジュールに並ぶ文字はほとんどが「語学訓練」になる。
訓練における語学の比重がいかに高いかが良くわかる。
と言うことは、やはり実際に任地に行った際に最も困るのは語学に関してと言うことだ。

まあ、そうなるな。

午後の課業が終わるとお待ちかねの夕食の時間だ。
それまでの短時間の間にお風呂に入ってしまう人もいるようだが、私は食後にゆっくりとつかりたい派の人間なので、その間は英語の予習復習をする。

土曜の夕食と日曜の三食に関しては希望者のみが喫食が可能だ。
しかし、逆に希望した場合は必ず摂らなければ後でお叱りを受けることになってしまう。
なので土曜の夜に飲みに行くか否かは割りと事前に予定しておかなければならない。
なお、土曜夕食と日曜三食の希望締め切りは木曜日までとなっている。
それ以降は追加希望も取り消しも出来ない。

午後の課業が終わって自室で英語の勉強をしていると、自室のドアがコンコンと叩かれる。
鍵を開けて扉を開くと、 班員の見知った女性が一人。
なんでも、これから急に飲みに行くことになったので、夕食を貰ってほしいと言う事だ。
特に断る理由も、まああるにはあるが、無碍に断るのもなんなのでひとまず快諾しておく
おかずのやりとりが見られるのは上述した通りだが、こういったやりとりもやはり認められている。
要は、残さなければ良いのだ。残さなければ。
ただ問題なのは私が2人分食べなければならないということと、今日は豚汁の量がハンパなかったということだ。
肉だったら大喜びしてたんだけども。

しかも、私今ダイエット中なんだよなー・・・。

さて、夕食が終わると残りの時間は自由に使うことができる。火曜日以外は。
火曜日に関してはまた今度お話しすることにしよう。

火曜日以外は、基本的に夕食後にお風呂に行く。
お風呂は共同の大浴場だ。
これほど大きな湯船に毎日つかることができるというのは訓練生活における癒しの一つと言える。
人間、お風呂につかるという行為は予想よりもはるかに肉体へ良いリラックス効果をもたらすと言う。
他の隊員候補生も当然一緒に入ることになるので、裸の付き合いと言うものが生まれることになる。
同じ釜の飯を食い、裸の付き合いをする。
他では得がたい連帯感が生まれるのも無理はない。

風呂を浴び終えて自室に戻るとようやく一息つける時間が訪れ
\コンコンッ/
ない。
ドアを叩く音に再び鍵を開け扉を開くと、また別の班員がそこに。
PCの使い方がわからないから教えて欲しいと言う事だ。

これまで私はIT業界にいたということもあり、PCに関してそこまで頼られるようなことがなかったのでとても新鮮な気持ちである。
訓練所において、PC関連の職種の隊員はとても重宝されるようだ。
過去の隊員の中には訓練所内にあるLANの整備を全てやってしまったと言うツワモノもいたらしい。
今のところ良く聞かれる内容は、「共有フォルダへの接続方法」と「プリンターの初期設定」だ。
共有フォルダに関してはデスクトップ上にショートカットを作ってやり、プリンターはドライバーのインストールだけちゃちゃっとやって終わりである。
今後は徐々に質問の内容も変わってくるだろう。

自室に戻り英語の予習復習をしていると、22:20くらいにチャイムが鳴る。
夜の点呼の予鈴だ。
その10分後の22:30から夜の点呼が始まり、にわかに廊下が騒がしくなる。
中には既に寝ている人もおり、その場合は別の人に「もう寝ます」と伝えておけば点呼には出る必要はない。
私の班は男性10人女性9人で、男性と女性で居住階が分かれているため、女性側の点呼は副班長の女性にお任せしている。
私の側は10名の男性がいることを確認し、それをその日の人員のとりまとめをする日直に報告すればその日のお仕事は全て完了だ。

おっと、忘れてはいけない大切なお仕事が最後に残っていた。
それは、「よく寝ること」だ。

これからまだまだ長い期間続く訓練生活において、ストレスを少しでも溜めるような生活習慣は極力ないほうが良い。
そのストレスを少しでも減らしてくれるのが「質の良い睡眠」である。
普段から寝酒をしていた私にとって、寝る前にお酒を飲めないというのは「眠れない」と言うこととほぼ同義だ。
しかし1週間この生活をすると、だんだんとお酒を飲まない寝床と言うものにも慣れてくるものだ。
今日も、良い夢が見られそうである。






ひとまず、昨日の1日を細かく書いてみた。
大体おんなじ毎日だけど、まあまあそれなりOKである。
だけど、なんとなく虚しくは別になりはしないのでご安心されたし。

JOCV候補生の、訓練所での生活がどのようなものかが少しでも伝わればと思う。
つらいことも疲れることもあるが、まあ楽しくやっている。

他にも書きたいことは山のようにある。
しかしほぼ毎日がこんな感じなので、日曜のあいた時間くらいしか余裕がないのが現状である。
過去の訓練生の中には毎日ブログを書き続けた猛者もいたらしいが、にわかには信じがたい。

残念ながら、次のエントリーも1週間ほど開きそうだ。

それでは、良い週末を。


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