2015/08/15

BLAND NEW WORLD その2

面談の会場として指定されたのは都内某所。

さほど大きくない貸しビルのひとフロア丸々使っているようだったが、まずエレベータでその階に到着しても、 扉には何も書いていなかった。

「そこが今日の面談会場であるか」と一発で識別できるようなものもパッと見なにも見受けられない。

その時点で、若干いやな予感を感じる。


面談は16時開始、腕時計を見るとすでに時刻は5分前を指している。

目の前にある扉の先が本当に指定された会場なのか確証が持てないまでも、これ以上他の場所を探している時間的余裕もない。

仕方なく、恐る恐る扉を開ける。


中は大きなフロアを簡単な仕切りで複数の部屋へ分割し、一つずつを個別の会議などで使用しているようだった。

しかし、その仕切りも完全な間仕切りというわけではなく、上部が吹き抜けになっていたりするので、各部屋から話している声が駄々漏れとなっている。

特に入り口付近に何かインターホンがあるわけでも受付があるわけでもない。

当然受付嬢が居るわけでもないので、中に入ったところで人が居るわけでもなく、誰かが運良く通りかかるのをひたすら待ちぼうけする。

え、なにこれは。

明らかに、来客を受付ける体制が整っているとは言いがたい。

少し待って、ようやく通りかかった女性に声をかける。

「あの、すみません、今日面談予定の増野と言いますが」

そう言うと、女性は「かしこまりました、少々お待ちください」とだけ言い残し、奥へと去ってしまう。

ひとまず意思疎通のできる何かに遭遇できたことで、少し安心する。

少し待つと、奥からようやく、私の担当者らしき人が出てくる。

「あ、こんにちは、すみません遅くなりまして」

先手を切って、こちらから話しかける。

「はい、こちらへどうぞ」

促されるまま奥の部屋へ 歩く。

担当者さんに促されて入ったのは、やはり上部が吹き抜けになっていて中途半端に仕切られた小部屋だった。

入るなり、ひとまず着席を促される。

「今日は、よろしくお願いします」

何がなくともとりあえずそう前置きしてか着席する。

すると、担当者は特に着席すると言うこともなく、おもむろに部屋の中にあるホワイトボードへ向き、

「ひとまず、現在のIT業界の縮図を説明します」

と、ホワイトボードへ何か書きながら説明を始めた。


・・・なんだこれ。

まず一つ、私はこいつに会ってから、まだ一言も「挨拶」と言うものを貰っていない。

二つ、私はまだこいつから案件を貰うという立場になっていない以上、私は「客」のはずだ。
なのに、この扱いは一体なんだ?


既にこの時点で少々頭に来ているのを抑えながら、ひとまず担当者の話を聞く。

しかし、出てくる話はことごとく「このスキルが足りない」とか、「このツールくらい使えるようになっておいて欲しい」と言ったものばかりだ。

そのスキルも、やれPerlだのRubyだのひと月もあればそれなりに習得できる言語のものであったし、ツールに関しても後で調べてみたら、ただの「メッセンジャー」、「スケジュール管理」、「リポジトリー管理」に関するツールだった。

極めつけは、「エンジニアは、40歳を超えると急に案件の引き合いが悪くなります」。


話を5分ほど聞いた時点で、早くも帰りたいという衝動に駆られていた。


家に帰ってから、話半分で担当者から聞いた話を一応反芻する。

しかしいくら考えても、その礼儀知らずの担当者に、案件を紹介してもらう気になることはなかった。


ああ、やっぱりこいつらもそうなのか。

日本国内の資本主義の豚どもは、ことごとく俺たち技術者を舐めてるんだな。

技術者を、ただの金儲けのコマとしか見ていない。


なぜ、我々技術屋が見下されなければならないのか?

技術とは、そんなに要らないものなのか?

「安かろう悪かろう」が、そんなに偉いのか?


ここまで考えてようやく、日本を捨てて海外で働こう、と思うようになる。

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